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藤本隆宏52歳が振り返る”日本記録の過去”を消し去ろうとした俳優生活「水泳を避けるように生きていた」「記録が破られて未練が吹っ切れた」
posted2022/07/26 17:02
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
Takuya Sugiyama
NHKドラマ『坂の上の雲』広瀬武夫役やTBS日曜劇場『JIN-仁- 完結編』で西郷隆盛役を演じ、その演技が話題になった藤本隆宏。藤本は俳優となる前に、水泳選手として2度のオリンピック出場を果たしている。異色の経歴を持つ藤本に俳優人生と水泳の捉え方の変化について聞いた。(全3回の3回目/水泳選手としての現役時代については#1、#2をお読みください)
「水泳を避けるように生きていました」
スイマーは引退してもプライベートなどで泳ぐケースが多いというが、引退して舞台俳優となった藤本隆宏はプールに足を運ぶことがなくなった。競泳の大会の中継も観ようとは思わなかった。オリンピックはなおさらだった。
「アトランタ(1996年)も、2000年のシドニーも観なかったですね」
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長い競技生活を終え、そこに充実感はなかった。目標に手が届かなかった歯がゆさだけが募った。個人メドレーの日本レコードホルダーとして刻んだ歴史も意味ないものに感じられた。消し去りたいとさえ考えていた。
藤本は自分が競泳の日本代表であったこと、オリンピックに2度出場したキャリアを持つことを口にせず活動を続けていた。
「達成できなかった自分から逃げるように演劇の世界に入ったという感覚もありました」
「ああ、水は好きなんだな」
しかし今、子どもの頃からの水泳との日々を振り返る表情は穏やかだ。
ほぐれていったきっかけはどこにあったのか。
「何かこれがあったというのではなく、少しずつという感じでした」
2つの出来事が大きかったという。