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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
ソン・フンミンと日本人プレミアリーガーの意外な接点… 吉田麻也への「誇り」と“岡崎慎司の予言”とは〈得点王の現地リアル評〉
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byTottenham Hotspur FC/Getty Images
posted2022/07/13 17:01
2021年9月、ノースロンドンダービーでのソン・フンミンvs冨安健洋のマッチアップ
岡崎が「いい人」と褒めるように、ソンは記者の間でも非常に好感度が高い。試合後の取材エリアで、ソンは英国メディアと韓国メディアの取材に必ずと言っていいほど応じている。そんなソンを、クラブを追いかける英国人記者は親しみを込めて「ソニー」と愛称で呼ぶ。
儒教の影響の強い韓国では、年上の人に敬意を持って接するべきとの教えがあるという。ソンも例外ではなく、韓国人記者に対して軽くお辞儀をしてから取材を始めることが多い。
筆者も、吉田麻也についてサウサンプトン退団時に質問したことがあるが、「競争の激しいプレミアリーグで7年半も戦い続けた事実が、彼の偉大さを物語る。本当にすごいこと。同じアジア人として、とても誇りに思う。イタリアでの幸運を祈っている」と真摯に語ってくれた。
岡崎が予言した「アジアからもっと凄い選手が」
プレミア得点王に贈られるゴールデンブーツ賞を手にしたソンの笑顔を見ながら、思い出したことがあった。先述した岡崎の言葉である。
2016年に「ベスト・フットボーラー・イン・アジア」を受賞した際、岡崎は喜びを示しながらも、2015-16シーズンで公式戦通算で6ゴールに終わった結果に物足りなさも感じていた。
「自分のような献身性や頑張りが注目されている選手が、今回のような賞を頂いた。『アジアの選手がプレミアリーグで生き残っていく可能性を示した』という意味では、すごく嬉しいことではある。だけど、世界的に見たら……例えばアフリカなら、アルジェリアのリヤド・マフレズが、レスターでとんでもない結果を残して(アフリカ大陸の年間最優秀選手に)選ばれた。
だから今後は、僕よりもっと活躍した選手が賞を取るべきだと思う。そうすれば、アジアからもっと凄い選手が出てきた、ということになるから。新しい世代がヨーロッパの選手としのぎを削って、その中にどんどん入っていく必要があるかなと。受賞はもちろん嬉しいが、この結果で賞を頂くのはどうなのかなとも感じた」
ネットを揺らし続けてプレミアリーグの得点王に輝いたソン・フンミン。その功績は、岡崎が期待したように「アジアからもっと凄い選手が出てきた」ことになるだろう。
謙虚な姿勢を保ちつつ、プレーはアジアの枠を越えた。そう今や、ソンはプレミアリーグ、そして世界の最高峰へと登りつめたのである。<#2/南野編につづく>
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