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《F1》勝ちに不思議の勝ちあり…6勝目のフェルスタッペンと6連勝のレッドブルが、シーズンを楽観視できない理由とは
posted2022/06/23 06:00
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images / Red Bull Content Pool
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」
これは往年の名監督、野村克也の座右の銘として話題になった名言だが、元は平戸藩の9代藩主だった松浦清が、松浦静山の名で執筆した書物の中に収められている言葉だ。
その意味を解釈すれば、次のようになる。
「負けるときは、必ずそこに負けにつながる必然的な要因がある一方、勝利には何か負けにつながったかもしれない要素があるにも関わらず、勝ってしまった不思議な勝ちがある」
じつは今シーズンのF1にも、これと似たような状況が生じている。
第9戦カナダGPを制したのは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンだった。この勝利でフェルスタッペンは今シーズン9戦目にして早くも6勝目を挙げ、レッドブルは第4戦エミリア・ロマーニャGPから連勝を「6」へと伸ばした。
傍から見れば、フェルスタッペンとレッドブルがタイトル争いで独走状態に入ったかのように思われがちだが、フェルスタッペンも、そしてレッドブルもまだ楽観視していない。それは、この日の勝利がレース終盤に出たセーフティーカーにより、状況が一変した中でつかんだものだったからだ。
運が味方した薄氷の勝利
決勝レースはポールポジションからスタートして2ストップ作戦を採ったフェルスタッペンと、1ストップ作戦で逆転優勝を狙ったフェラーリのカルロス・サインツの対決となった。トップを走っていたフェルスタッペンが43周目に2度目のピットストップを行って2番手に後退。代わってトップに立ったサインツとの差は10秒以上あった。だが、残り21周の勝負になろうとしていた矢先、角田裕毅(アルファタウリ)のクラッシュによってセーフティーカーが導入された。
セーフティーカーが導入されれば、車間がなくなった状態で再スタートが切られるため、古いタイヤのサインツは簡単にフェルスタッペンに逆転されてしまう。そこでフェラーリはポジションを失ってでもピットインし、新しいタイヤで再スタート後の逆転に賭けた。
サインツはフェルスタッペンとテール・トゥ・ノーズのバトルに持ち込んだが、フェルスタッペンが猛追を抑え込んでカナダGP初優勝を遂げた。
しかしレース後、フェルスタッペンは「もし、あそこでセーフティーカーが出ていなければ、1ストップのカルロスに追いつくことができたかどうかはわからない」と語った。つまり、カナダGPでのセーフティーカー導入はフェラーリよりもレッドブルに有利に働き、フェルスタッペンはその幸運を確実にものにして勝利したわけだ。