レッドブルの6連勝の中には、このような勝利が少なくない。この1戦前のアゼルバイジャンGPも、優勝争いをしていたフェラーリのシャルル・ルクレールがパワーユニットのトラブルでリタイアしたために、フェルスタッペンは戦わずして勝利を収めた。

　優勝したフェルスタッペンは「（ルクレールが）リタイアしたことはほんの少しラッキーだったかもしれないけど、それでも今日の僕らのマシンは本当に速かったから、フェラーリがリタイアしていなくても、ギャップを縮めることもできたはずだし、そうなればレース終盤は面白いバトルが始まっていただろう」と語るが、エンジントラブルがなければ、ルクレールが勝っていたという意見も少なくない。

　その前の第7戦モナコGPも、ポールポジションからローリングスタートし、トップを守ったルクレールがそのまま優勝するかと思われたが、ルクレールがピットアウト後に周回遅れにつかまる不運があったこと、さらにその後フェラーリが戦略ミスを犯したことによって、レッドブルが逆転勝利を挙げたレースだった。

　第6戦スペインGPにしても、フェラーリのマシンにエンジントラブルが発生していなければ、ルクレールの楽勝に終わるレースだったと言っていいだろう。

　つまり、ここ数戦のレッドブルとフェルスタッペンの連勝は、まさに“不思議の負けなし”といえる、原因が明確なフェラーリの敗北によって達成されたものなのだ。

追われる者の懸念

　そのことを一番感じているのは、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表だ。

「結果だけを見ると、ここまでわれわれは確かに多くのレースで勝利を挙げているが、そのひとつひとつの勝利をよく見れば、決して楽勝ではなかった。次のイギリスGPは伝統的にフェラーリが強いし、メルセデスも復調している。2カ月前のオーストラリアでマックスがリタイアし、絶望しかけていた状況にいたことを我々は忘れてはいけない」

　この日、フェルスタッペンが優勝した一方で、チームメートのセルジオ・ペレスはギアボックストラブルでリタイアしている。

「信頼性は常にわれわれの懸念事項だ」と語った後、ホーナーはこう続けた。

「歯車がちょっとでも噛み合わなくなれば、この世界は簡単に逆転してしまう」

　次に“不思議の勝利”を収めるのは、誰だろうか？

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