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那須川天心19歳「負けるのは怖くない。やるなら今年中ですね」 4年前に語っていた武尊戦への思いと“ボクシング転向の可能性”
posted2022/06/19 11:03
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Daisaku Nishimiya
ダイナミックなバックスピンキックを顎にヒットさせ、タイの現役ムエタイ王者を一撃KO――漫画や映画のようなKOシーンをリングで量産する格闘家がいる。昨年の大晦日には、RIZINのキックボクシングトーナメントで優勝し、賞金300万円を手にした。弱冠19歳。童顔ながら、キックボクシングは24戦全勝という無敗のレコードを更新中で、KO勝ちは20。相手を一撃で仕留める姿に人々は酔いしれている。
那須川天心とは何者なのか。
大晦日の試合から10日後。父親の運営するTEPPEN GYMに那須川は、リングで見せた強気な表情とは一転、若者らしいはにかんだ笑顔で現れた。
「まあ、メッシと一緒ならいいか」
実は那須川は、プロとして活躍する今でも、このジムで第2の天心を夢見る子供たちに指導を行なっている。
「この子は昔の俺に似ているなって思うことも結構あります。子供だから何でも吸収するし、伸びないと思う子はまずいない。だから手を抜かず、僕が今までやってきたことをそのまま教えています」
4人兄弟の長男として、弟や妹の面倒もよくみている。
「兄弟はかわいいし、面倒を見るのは楽しいですね。妹はプロでキックをやると決めてて、弟はボクシングをやりたいと言っていて、それもいいかなと思っています」
いまどき珍しい素直で思いやりのあるお兄さんだが、ニックネームは“神童”。とはいえ、那須川は何と呼ばれようと気にしていないようだ。
「最初は神童の意味が分からなくて。少し経ってから、そういえばどういう意味だろうって調べたら“すごい子供”みたいな意味でした(笑)。まあ、メッシと一緒ならいいか、って思う程度です」
だが、活躍するフィールドがキックボクシングにとどまらないのも神童たる所以だろう。一昨年の12月29日にRIZINでMMA(総合格闘技)デビューを果たすと、こちらも4試合無敗の快進撃を続けている。