「う～ん、でもMMAの方は数えるほどしかやっていないので、まだまだMMAファイターとはいえないですね。打撃だけはできるので、レベル的には小学校高学年くらいじゃないかなあ」

　過去、キックボクサーがMMAに、あるいはMMAファイターがキックボクシングに挑戦する例はあったが、継続して二刀流を貫くケースは史上初。二刀流は大リーグに挑戦する大谷翔平だけのものではない。

「格闘技の世界ではそういう人が過去にいないので、これから先自分がどうしていくかによって、新たな道が作られる。まだ探りながらやっているという感じです」

2016年12月29日のRIZINでMMAに初挑戦した那須川天心。アームバーのピンチを切り抜けパウンドで逆転勝ちを収めた　©RIZIN FF Susumu Nagao

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父とともに磨き上げた鉄壁の防御力

　他の選手と比べて試合数が圧倒的に多いのも那須川ならでは。通常格闘技は年間平均3～4試合が普通。だが、那須川はここ2年、いずれも9試合も闘っている。

「自分でもだいぶ多いと思いますが（笑）、まあ10代の今だからできることかなって」

　いくら若いとはいえ、那須川だけがなぜそんなに試合ができるのか。その理由のひとつが、ケガをしない鉄壁の防御にある。

「相手の攻撃をもらわずに打つことを大事にしています。打ち合っているように見えるけど、実は相手の攻撃は全部避けて、自分だけ当てるというのが理想。そのために大事なのはスピードと相手の気持ちを読むこと。相手がかけるフェイントのちょっとした動きにも、すべて反応して避けると、相手は嫌になるんですよね。で、来そうだなというときに、自分から先に攻撃を出す」

　スピードと防御は、5歳で空手をはじめたときから父とともに磨いてきたものだ。かわし方がうまくならなければならない裏事情もあった。

「父が使ってるミットは普通より薄くて、固いんですが、パンチを受けたらそのミットで、すぐにフルスピードで打ってくるんですよ。いくらガードやブロックをしても痛いから避けるしかない。避けながら打つ姿勢を作る攻防一体です。考えていたら避けられないので、父との練習も1から10まで言葉で説明するのではなく、こういう時にはこうやってみるか、と感覚でやることが多い。格闘技って計算していてもダメ。感覚派の人の方が強いんじゃないかな」

　歴戦の那須川に昨年一番印象に残った試合を尋ねると、しばし考えた後に、南米20冠王者のイグナシオ・カプロンチ戦を挙げた。本来RISEバンタム級タイトルマッチとして行なわれるはずだったこの試合は、イグナシオが計量に失敗、ノンタイトル戦となるも3回1分15秒にKO勝利を収めた。

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