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那須川天心19歳「負けるのは怖くない。やるなら今年中ですね」 4年前に語っていた武尊戦への思いと“ボクシング転向の可能性”
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byDaisaku Nishimiya
posted2022/06/19 11:03
2018年、雑誌『Number』のインタビューに応じた那須川天心。武尊との“夢の対決”の可能性や、ボクシング転向の構想を語っていた
4年前に語っていた「ボクシングをやるかも」
キックをもっと世に広めることも目標のひとつだ。キック復活の機運は少なからずあるが、地上波のゴールデンタイムに当たり前のように放送されていた旧K-1やPRIDEの黄金期には及ばない。キックをメジャーにするにはどうしたらいいのか。その答えのひとつがK-1WORLD GPフェザー級王者・武尊との夢の対決の実現だ。昨年大晦日のトーナメントで優勝した直後、那須川は超満員の大観衆に問うた。
「僕と誰との試合が見たいですか?」
答えはひとりしかなかった。那須川は僕からやりたいというわけではないと前置きしたうえで口を開いた。
「いろいろな人からやらないの? と聞かれるので、そのたびに僕はまわりが見たかったらいつでもやると答えています。ルールは何でもいい。格闘技界を盛り上げるためには僕だけが活躍するのもダメだと思うんですよ。色々な色を持った選手が増えれば、もっと盛り上がるはずなんです。だから向こうも盛り上げる気があるなら、発言してほしい。大人の事情という言葉は取っ払わないといけない」
キックボクシングを盛り上げるためなら負けることも怖くないという。
「アマチュア時代には負けたこともありますし、いつかは負けると思うこともあるし、それは恐怖ではない。むしろ負けないような闘いをしたり、そういう考えをした時点で、プロの選手としては終わりです。勝負はリスクを取らないと面白くない。それに、負けたら終わりじゃなくて、そこから生まれるドラマもある。ただ、やるなら今年中ですね。タイミング的に今年じゃないと」
那須川は22、23歳でひとつの区切りをつけようと考えている。
「その年になったら、次に何をやるか考えます。もしかしたらボクシングをやるかもしれないし、MMAに専念するかもしれない。あるいはそのままキックを続けるかもしれない。いずれにせよ、それまでにキック界をもっと盛り上げたい」
もうすぐ4年制の高校を卒業し、職業は「格闘家」となる。型破りな若者は次にどんなセオリーを壊してくれるのか。
那須川天心(Tenshin Nasukawa)
1998年8月18日、千葉県生まれ。5歳で空手をはじめ、小学6年生でキックボクシングに転向。'14年7月RISEでプロデビュー。史上最年少の16歳でRISEバンタム級王者に輝き、現在も無敗記録を重ねる。165cm、55kg。