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中学3年生の那須川天心に抱いた確信「当時から、明らかに“モノ”が違っていた」 カメラマンが惚れ込んだ“天賦の才”と知られざる素顔 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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posted2022/06/17 17:02

中学3年生の那須川天心に抱いた確信「当時から、明らかに“モノ”が違っていた」 カメラマンが惚れ込んだ“天賦の才”と知られざる素顔<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2014年2月11日、中学3年生の那須川天心がプロデビュー前に実施したエキシビションマッチ。“神童”の才能はすでに萌芽していた

「すでに勝負師の顔に…」いざ武尊戦へ

 2017年1月、天心が初めてRIZINで試合をした数日後に、取材(撮影)に行ったときのことを思い出す。彼は年始に除夜の鐘を聞いて、神社にお参りに行った際、道行く人や露店の人など、見知らぬ人から声をかけられたそうだ。「地上波の影響力はすごいんだ」と彼が驚いていたことが、随分と昔のことのように感じられる。

 また、そのときに取材者が幼少期について聞くと、彼は「反抗期もなく、小さい頃から練習、練習。サボろうとしたら、父ちゃんにぶん投げられました(笑)」と茶目っ気たっぷりに答えた。父親の弘幸さんは覚えていないというが、それに対して天心は「やった方は覚えていないだろうけど、やられた方は覚えているんですよ」と笑いながら話してくれた。

 天心の魅力は、試合だけではなく、「格闘技を通じて社会に恩返しがしたい」という志を持っていることだろう。2018年から「天心ファミリープロジェクト(子ども支援活動)」をNPOピースプロジェクトと共同で立ち上げた。これは児童養護施設やファミリーホーム、里親と暮らす子どもたちを支援する活動である。自分の試合を観てもらい、将来の夢や希望、そして諦めない気持ちを持ってもらうことを目的としたボランティアだ。過去には施設を訪問して、ミット打ちなどの練習も行った。

 2019年には、RISEトーナメントの優勝賞金1000万円の半額にあたる500万円を台風の被害に遭った地元の千葉県へ寄付し、残りの500万円は天心プロジェクトへと寄付した。

 今でも彼は毎試合、施設の子どもたちを招待し、触れ合う時間を大切にしている。6月19日の東京ドームでも、その光景は見られるだろう。

 じつは先日、写真集のプロモーションのため、天心と対談をした。武尊とのメガマッチを控えた彼は、すでに勝負師の顔になっていた。久しぶりに見る、緊張感あふれる表情だ。そのときに言い忘れたことがあったので、この場を借りて伝えさせていただきたい。

「天心君、今まで日本の格闘技界を背負ってくれてありがとう。武尊選手との試合は、自由に、自分のためだけに試合をしてほしい。もっと高く、もっと遠くに!」

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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