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中学3年生の那須川天心に抱いた確信「当時から、明らかに“モノ”が違っていた」 カメラマンが惚れ込んだ“天賦の才”と知られざる素顔

posted2022/06/17 17:02

 
中学3年生の那須川天心に抱いた確信「当時から、明らかに“モノ”が違っていた」 カメラマンが惚れ込んだ“天賦の才”と知られざる素顔<Number Web> photograph by Susumu Nagao

2014年2月11日、中学3年生の那須川天心がプロデビュー前に実施したエキシビションマッチ。“神童”の才能はすでに萌芽していた

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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Susumu Nagao

 かつて私は、中学生だった那須川天心の試合を見て、こう予感したことがある。「日本の格闘技の歴史を語る上で、この選手は唯一無二のスーパースターになる」と。彼がボクシングに転じると聞いたときに、キックボクサーとして歩んできたこれまでの生き様を、一冊の写真集として残したいと思った。そういった経緯から、このたび写真集『那須川天心 ALL OR NOTHING』(小学館)を出版した。

 この本の中には、デビュー戦はもちろん、高校の卒業式や横浜スタジアムでの始球式など、試合以外の写真も収録されている。当時15歳の少年だった那須川天心が、8年の時を経て大人になってゆく過程を撮り続けたドキュメンタリーとも言えるだろう。

『ALL OR NOTHING』(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)那須川天心 ALL OR NOTHING』(書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします)

中学3年生が見せつけた規格外の才能

 天心とはプライベートで一緒に釣りをすることも多い。また私のスタジオにも、オープニングパーティーや撮影で何度も来てくれている。ここ数年で彼は忙しくなり、会って話をする機会は減ったが、礼儀正しさと謙虚さは以前とまったく変わらない。会場で私を見かけると、どんなに忙しくても挨拶をしてくれる。そして試合後は「お疲れさまでした」と声をかけてくれる。有名になっても決して偉ぶることはなく、常に自然体で冷静沈着である。そんな素顔の天心を、写真とエピソードで紹介したいと思う。

 私が初めて天心を撮影したのは2014年2月11日のことだ。当時、彼は高校入学を間近に控えた中学生だった。エキシビションとして、満員の大田区総合体育館で第7試合に登場。対戦相手は新日本キックライト級王者の石井達也だったが、臆することなく堂々と切れのある鋭い動きを見せた。ときおり披露するトリッキーな大技も冴えわたった。その技術の高さと華やかさはすでに一級品で、天性の才能を感じた。これまで私は国内外の数多くの格闘家を撮影してきたが、将来、日本を代表する選手になることは間違いない、と確信した。

 同年7月、天心はRISEの現役ランカーを相手にプロデビューをする。相手に攻撃されることもなく、一方的に攻め込んで、あっという間に試合が終わった。わずか58秒のKO劇。とてもデビュー戦とは思えない、堂々とした闘いぶりが印象的だった。

 その後も勝利を重ね、翌年5月31日にRISEバンタム級王座に挑戦することになった。チャンピオンの村越優汰は当時9連勝中(うち5KO)で、天心の挑戦は時期尚早という声も多く、私もその意見に賛同する一人だった。タイトルマッチの数週間前、父親の那須川弘幸さんと釣りに行く機会があり、この話をすると「全く問題ないです、早いラウンドでKOしますから」と自信たっぷりに断言した。

【次ページ】 KO連発の快進撃、試合中に“トリケラトプス拳”も披露

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