濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「なんで倒れへんねん…」”武尊に勝った男”京谷祐希が語るあの一戦とTHE MATCH「そろそろ、天心くんに呪いを解いてほしい(笑)」
posted2022/06/17 11:02
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Takao Masaki
那須川天心vs.武尊の世紀の一戦『THE MATCH 2022』(6月19日、東京ドーム)が目前に迫ってきた。
那須川はプロ公式戦無敗。武尊は新人時代に喫した1敗だけ。立ち技軽量級トップ同士の闘いであり、これほど「どちらが勝つのか」、「強いのはどっちなのか」と想像をかき立ててくれる試合もない。
いったいどんな試合になるのか。その大きなヒントを与えてくれる存在が京谷祐希だ。2012年、彼はKrushのリングで武尊にTKO勝ちを収めた。武尊に唯一の黒星を与えた男は、現在RISEで試合をしている。那須川と同じ団体、かつ階級も同じ。那須川と2度対戦したRISE王者・鈴木真彦と同門でセコンドにもついた。つまり“武尊に勝った男”であると同時に“那須川を研究し尽くした男”と言ってもいい。那須川vs.武尊について語ってもらうには、これ以上ないほど適任だろう。
10年前、京谷はいかに武尊に勝ったのか?
京谷が武尊と対戦したのは2012年6月8日の『Krush.19』後楽園ホール大会でのこと。京谷は関西のDEEP KICKで売り出し中、武尊はKrushで5戦5勝4KOという快進撃を見せていた。Krush初登場で武尊戦というオファーに、京谷は「おいしい」と思ったそうだ。
「みんなが強いって言ってる選手でしたけど、自信があったので。映像を見たら、僕にとって相性がいい相手だと思ったんですよ。ジャンケンだったら自分がパーで武尊くんがグーみたいな。
武尊くんは負け知らずで怖いもの知らず。どんどん前に出てくるので、僕は“一発よけてカウンター、またよけてカウンター”という練習ばかりしてました。これはいけるとずっと思ってましたね。周りは僕が負けると思ってたみたいやけど(笑)」
試合は、京谷の予想通りになった。武尊が圧力をかけてきたところにサウスポースタイルからの右フックがヒット。動きが止まったところへの追撃で、今度は腰が落ちた。それでも武尊は守るのではなく、一気に逆転しようと連打してくる。さらに右アッパーでダウン。
「ダウンを取ったことで、僕には一番やりやすい形になりました」と京谷。武尊が興奮して攻撃が荒くなれば、それだけカウンターも当てやすい。京谷のパンチで鼻を負傷した武尊は、1ラウンド終了後に続行不能でTKO負けとなった。
「僕は倒すことより勝つことだけを考えてました。当時の関西の選手にとっては、東京で勝つこと、後楽園で勝つことが凄く大事やったんですよ。もともと僕は冷静に、練習通りにやることが持ち味。武尊くんとの試合でも“判定でもいいから勝つ”という気持ちでした。それがよかった」
「普通にやったら」那須川が有利
冷静さ、カウンターが得意なこと、それにサウスポー。京谷には那須川と共通する部分が多い。那須川にとっても、武尊は相性のいい相手だと京谷は見ている。「普通にやったら」那須川が有利だと。京谷は那須川を、同門の後輩である鈴木真彦の相手として研究してきた。つきっきりで練習し、セコンドにもついている。
「鈴木との1戦目(2015年)の時から、これは凄いなと思ってましたね。本当に強い。相手や自分の調子、状況しだいでいろんな闘い方ができるんです。一瞬の判断でベストな選択をする。行くと見せかけて行かなかったり、性格の悪さもありますね(笑)」