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“世紀の一戦”を前にした那須川天心の告白「正直、決まったときは不安がありました」… 武尊の存在は「徐々に小さくなっている」
posted2022/06/14 11:03
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Susumu Nagao
「対戦相手のイメージをしっかり持って動いて!」
チーフインストラクターを務める那須川弘幸代表(TEAM TEPPEN)の気合いの入った掛け声が飛んだ。
5月中旬、関東某所で4日間にわたって行われたTEAM RISEの合同合宿。6月19日に東京ドームで開催される『THE MATCH 2022』に出場するメンバーを中心に、全国から多くの選手が招集された。
その中心は、やはり武尊とのラストマッチを控えた那須川天心だった。合宿初日は全員参加による「THE MATCH対策会議」が開かれたが、天心に自分の試合や闘い方についてのアドバイスを求める選手が多かった。
さしずめ天心の戦略塾だ。質問を受けると、天心はひとつひとつ丁寧に答えた。
「最終的にもう僕と闘う人は誰もいないので、躊躇なく教えることができました」
昨年6月、RIZINの東京ドーム大会で天心とボクシングマッチを闘った大崎孔稀は「自分に合ったアドバイスをしてくれた」と喜んだ。
「だからすんなりと僕の中に入ってきました。前手(左手)の使い方など、いろいろ勉強になりました」
大崎について、天心は次のようなコメントを残している。
「センスもハートもあるので、非常に教えやすい。僕は『大崎君にはこれが合っている』というエッセンスを加えた感じですね」
「武尊に勝った男」も舌を巻いた“駆け引きの妙”
大崎孔稀との再戦だけではない。マススパーになると、天心絡みの夢の対決が続出した。大崎孔稀の兄でハードパンチャーとして知られる大崎一貴は天心と拳を交わしたあと、「全部見られている感じがする」と証言した。
「こっちが入ろうとするタイミングだったり、打とうとする動きを察知されている。それに合わせてパンチが出てくる。こっちが当てようとしても、同時に当たるか、向こうの方が先に当たっている。メチャクチャレベルが高いですね」
2012年6月8日、武尊に唯一の黒星をつけたベテランの京谷祐希は初めて天心と手合わせ。その駆け引きの妙に舌を巻いた。
「打ち終わりや先に攻撃を出す瞬間を狙われているので、手詰まりにされる。詰め将棋で詰められているような感じです。たとえ僕の攻撃が多少当たったとしても、天心は熱くならずに冷静に立ち回る。『エッ、そこで逃げる?』というところでスカされる。さらに、『こんなところをどうやって蹴るの?』と首を傾げたくなる場面もありました。どこから蹴られているのかわからないんですよ」