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マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
《ドラフト中間報告》これがピッチャー“ドラ1候補”ベスト10…「北山は違うだろう、どうして?」昨年のランキングの“予想結果”も
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2022/06/17 17:03
ドラフト中間報告【投手編】10位 大野稼頭央(大島高〔鹿児島〕・176cm68kg・左投左打)
【投手編】8位 田島善信(星城高〔愛知〕・182cm79kg・右投右打)
均整抜群で投球フォームがいい。常時140キロ前半のスピードと使える変化球が3種。投げっぷりがよくて、ユニフォーム姿がかっこいい。足りないのは大舞台の経験値ぐらい。ところが6月の招待試合で、天理高の強打線を向こうに回して、一歩も退かない大奮投をやってのけたから、不安材料も解消した。
全国級の強豪相手に堂々のマウンドさばき。速球の威力にカットボール、スライダーにフォークも一級品。フィニッシュで跳ね上がるような躍動感を瞬発させながら、球筋が暴れない。サイズ的にはひと回り小さいが、私には「小園健太」にしか見えない。
能力開発率せいぜい60%、あとは伸びしろの塊だ。
【投手編】7位 村上幸人(福岡大〔九産大九州高〕・178cm75kg・右投右打)
こういう投手は、昔は「まとまってるだけで面白味がない」と、ドラフト的には捨て置かれたものだ。
驚くようなスピードはないが、複数の変化球を駆使しながら、制球よくムダ球を投げず、失点せずに試合を終わらせる。敗戦処理でも150キロ投げる今のプロ野球こそ、逆にこういう投手が威力を発揮するとみる。
ボールがすごくよく動くし、速球、変化球共、絶対というほど失投が高く浮かない。左打者の外に大きく落下するのはチェンジアップか? 右打者の外の「へんなボール」はスライダーだろう……とにかく、おかしな曲がり方をするし、ベース上で音もなく動くカットボールやツーシーム系もあるはずだ。大半が打者の打ち損じになって、ジャストミートを見ない。
140キロ前後しか出ないじゃないか、と言っても、135キロでも捕球点で捕手のミットを揺らす強さがはっきりわかる速球の威力。130キロ後半でも、スイングを跳ね返している。
昨季2シーズンで8勝2敗、83イニングでわずか自責点4。大学選手権の2試合でも2失点。それ以上のアドバンテージは、完投して112球という球数の少なさ。今春は体調不良のせいで、6月の大学選手権が2カ月ぶりの公式戦となったが、九州共立大を相手に8回を106球で無失点に抑えた。同じ「福岡」でさんざん研究されたはずなのに、「これ」だ。
オールローボールの制球力を生命線に、動きの激しい持ち球で果敢に攻めて、浅いカウントで打ちとっていく……守りの堅いチームが合っている。新しい先発タイプ誕生の予感がする。