佐藤にとって“緩急”は生命線だが、“気持ち”でも負けない。「どんなピンチでも絶対に抑えてやろうという気持ちが大事だと思っている」と話すように、マウンドでは堂々とした表情を見せている。

関東一高時代は2年春のセンバツでリリーフとして、3年夏はエースとして甲子園のマウンドを経験　©︎Sankei Shimbun

　関東一高時代は、オコエ瑠偉（東北楽天ゴールデンイーグルス）の1つ後輩で、寮では同部屋で過ごした。しかし、先輩たちが甲子園を沸かせた夏はメンバー漏れを経験し、スタンドから羨望の眼差しを送っていた。大学2年の秋には、神宮球場での東都1部リーグ昇格を決める中央大学戦で先発を託されたが、コントロールが定まらず負け投手となり、人目をはばからず涙を流した。

　そんな佐藤は父から教えられた、ある言葉をグラブに刻んでいる。小学校の野球チームで指導者を務めていた父のグラブに『七転八起』と刺しゅうされていたのを見てから意識するようになった。

「父からは人生、七回転んでも八回起きれば大丈夫と教えてもらった」

　その言葉通り、佐藤は何度転んでも起き上がってきた。悔しい経験を何度味わっても、スポットライトを浴びることはなくても、いつも強い気持ちでマウンドに立ち続けてきた。これからもピンチの場面では「また起き上がればいい」と開き直りの境地で冷静に投げていくだろう。

グラブに父の教えを刻む佐藤奨真　©︎Chiba Lotte Marines

「こうやって先発でチャンスをもらっている。なんとかして勝って、チームの勝利に貢献していきたい」

　背番号「64」のプロ野球人生は始まったばかり。剛速球が注目されがちのこの野球界で存在感を見せてほしい。

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