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“天才”が泣いていた…無骨なチームマンに徹したSO山沢拓也(27)リーグワン初代王者を手繰り寄せた2つのビッグプレー
posted2022/05/30 17:00
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph by
AFP/AFLO
いつもの天才・山沢拓也はいなかった。決勝戦の舞台にいたのは、試練を乗り越えようともがき、苦しみながらも、勝利に執念を燃やす泥臭い男だった。
「本当に苦しいシーズンで、苦しい試合でした」(坂手淳史)
優勝した埼玉ワイルドナイツの主将、フッカー坂手は、3万3604人が集った国立競技場を感慨深げに見渡していた。
1月の開幕前からラグビー国内最高峰「リーグワン」の優勝候補だった。コロナ禍で開幕節から2戦連続不戦敗となったが、鉄壁の守備力、リーグ随一の選手層で後半圧倒する必勝スタイルを築き上げ、第3節から全勝街道。
そしてリーグ初代王者をかけた2022年5月29日、国立競技場での決勝戦。
リーグ最強の攻撃力を持つ「最強の矛」東京サンゴリアスと、堅守速攻を持ち味とする「最強の盾」埼玉ワイルドナイツの対決は、6点差(12−18)というロースコアで決着した。
「特に後半は苦しい時間が続きました。勝ち切れて良かったです」
この日10番のスタンドオフを任された山沢拓也は試合後、安堵しているようだった。
松田力也に代わって担った10番
従来のスタンドオフ(10番)は、同学年で年代別代表でも共に戦ってきた松田力也だ。しかし松田はリーグ最終節の最初のボールキャリーで負傷。ケガの松田に代わり、準決勝から2試合は山沢が先発スタンドオフを担った。
「非常に成長しています。信頼して送り出すことができました」
埼玉ワイルドナイツを率いる名将ロビー・ディーンズ監督のそんな信頼は、裏切られなかった。