珠玉の1敗BACK NUMBER
リーチ マイケル――オールブラックスに憧れて、遊ばれて。
posted2022/05/31 07:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Yuka Shiga
第一線で活躍するアスリートは、敗戦から何を学ぶのか――。'15年、'19年大会とラグビーW杯で日本代表を牽引した前主将が挙げたのは、'11年大会・母国ニュージーランド戦の大敗だった。
【Defeated Game】
2011年9月16日 ラグビーW杯 プールA第2節
日本 7-83 ニュージーランド
◇
2015年の南アフリカ撃破も、'19年の史上初となるベスト8も、リーチマイケルが挙げた「珠玉の1敗」がなければきっと実現しなかった。
'11年9月16日、ワールドカップニュージーランド大会、予選プール第2戦のニュージーランド戦。
「ハーフタイムの雰囲気はどうだったかな。本来覚えておくべきところだとは思うけど、初めてのワールドカップで経験なんて全然なかったから。明るくもなれないし、かと言って(気持ちが)下がっているわけでもないし……」
記憶を整理しようと指先で頭を掻いてみても、リーチからは次なる言葉が出てこない。忘れたということではない。憧れの対象なのか、それとも倒すべき対象なのか、感情の合致が難しかった事実がうかがえる。
22歳で臨んだ初めてのワールドカップ。初戦のフランス戦は一時4点差まで詰め寄りながらも21対47で振り切られ、続く2戦目に母国の代表である夢にまで見たオールブラックスとの対戦が待っていた。
「子供のころからオールブラックスのことを見てきました。一緒に並んで入場したときから感情が高ぶっていました」