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“天才”が泣いていた…無骨なチームマンに徹したSO山沢拓也(27)リーグワン初代王者を手繰り寄せた2つのビッグプレー 

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多羅正崇

多羅正崇Masataka Tara

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photograph byAFP/AFLO

posted2022/05/30 17:00

“天才”が泣いていた…無骨なチームマンに徹したSO山沢拓也(27)リーグワン初代王者を手繰り寄せた2つのビッグプレー<Number Web> photograph by AFP/AFLO

ダミアン・マッケンジー(東京サンゴリアス)のノックオンを誘発する山沢拓也(埼玉ワイルドナイツ)のタックル。献身的なプレーが光った

 山沢拓也にしか出来ないプレーが存在する。

 たとえば準決勝の後半11分だ。高精度のキックスキル、天与のスピードを持つ山沢が真骨頂を見せた。

 キック処理に入った山沢は、ボールに追いつくや、猛然と迫るディフェンダーの頭上をフワリと越えるショートパント。一瞬の加速から相手背後に抜けだし、難なく再獲得。見事なカウンターに繋げた。

 準決勝という舞台でそれをやるのか——。想像を超えたプレーに周囲は驚くのだが、本人にとってはプレーの選択肢のひとつに過ぎないのだろう。ただその選択肢は、普通ではないのだ。

 想像していなかったことを涼しい顔でやってのけるから、天才と呼ばれる。

決勝での山沢は「無骨なチームマン」だった

 埼玉・深谷高校1年時から本格的にラグビーを始め、3年時には日本代表候補合宿に呼ばれた逸材中の逸材だった。当時の指揮官だったエディー・ジョーンズ元日本代表HC(ヘッドコーチ)は山沢の才能に惚れ込んでいたが、左膝前十字靱帯を断裂するなどケガに泣いた。

 しかし筑波大学4年時から“飛び級”で参加したワイルドナイツで、着実にキャリアを積み上げ、そして辿り着いたリーグワン最初のファイナル。

 最高の頂上決戦では、しかし天才としての姿は影を潜めた。そこにいたのは無骨なチームマンだった。

 山沢はチームの強みを「規律をしっかり守る。崩れないディフェンス」と語る。堅守ワイルドナイツの一員として、山沢は2つのビッグプレーで試合を変えた。

【次ページ】 優勝を引き寄せた2つのビッグプレー

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