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“天才”が泣いていた…無骨なチームマンに徹したSO山沢拓也(27)リーグワン初代王者を手繰り寄せた2つのビッグプレー
text by
多羅正崇Masataka Tara
photograph byAFP/AFLO
posted2022/05/30 17:00
ダミアン・マッケンジー(東京サンゴリアス)のノックオンを誘発する山沢拓也(埼玉ワイルドナイツ)のタックル。献身的なプレーが光った
1つ目は前半終了目前の39分38秒。
7点(3−10)を追いかける東京サンゴリアス。その攻撃を牽引する現役ニュージーランド代表、ダミアン・マッケンジーがトライラインに迫る。身長177センチながらオールブラックスの15番も担うマッケンジーは、驚異のスピードを持つ。
世界最高峰のスピードスターは、左側から追っていた山沢を振り切れると思ったのだろう、左手に持ったボールを持ちかえずにトライを狙った。しかし日本の天才が、ニュージーランドの天才のイメージを凌駕した。
山沢が執念で手を伸ばし、マッケンジーのノックオンを誘ったのだ。
会心のトライセーブ。ここまで山沢は2本のペナルティゴール(PG)を外しており、この逆襲は2本目の失敗が起点とも言えた。山沢はガムシャラに手を伸ばし、前半終了前のトライを防いだ。
試合を締めたディフェンス
2つ目のビッグプレーは、試合を終わらせるディフェンスだった。
最終盤、6点(12−18)を追いかける東京サンゴリアス。1トライ1ゴールで逆転可能な場面。試合時間残り6秒で、久保修平レフリーの笛が鳴った。
山沢が倒れたボールキャリアーに絡みついていた。東京サンゴリアスの反則でターンオーバー。豪州代表のマリカ・コロインベテらも共闘し、攻撃権を奪った。
どちらのビッグプレーも山沢の真骨頂である美技ではなかった。
無我夢中で追いすがり、ノックオンを誘う。歯を食いしばり、相手から攻撃権を奪う。泥臭いプレーで、日本一に貢献した。“堅守”ワイルドナイツの一員としての山沢がそこにいた。