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欧州サッカーPRESSBACK NUMBER
「CL決勝の痛恨ミスで誹謗中傷・殺害予告された守護神」カリウス28歳のリバプール退団… それでもクロップがずっと信頼した理由
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2022/06/12 11:01
17-18シーズンのCLファイナルで致命的なエラーをしたカリウス。かつての守護神は今……
それでも2シーズン目、カリウスは徐々にポテンシャルを開花させる。17-18シーズンの前半戦はCLを中心に出場し、リーグ戦ではパフォーマンスの安定しなかったシモン・ミノレに代わって、後半戦から出番を掴んだ。
そして当時まだ脆弱だったディフェンスラインを抱えながら、ビッグセーブで度々チームを救っていた。
ミノレがレギュラーだった前半戦の失点数「24」に比べて、カリウスがゴールマウスを守った後半戦で14失点に激減したのは、決して冬に加入したビルヒル・ファンダイクだけの功績ではない。
後半戦で見せた堅守は、クリスティアーノ・ロナウド擁する世界最強攻撃ユニットの完封に淡い期待を抱かせた。
そこでカリウスは、おそらく彼にとって人生で最悪の夜を過ごしたのである。
匿名のメッセージで非難が集中した
試合後、号泣しながらリバプールのファンに謝るカリウスに対し、スタンドからは温かい拍手が送られた。シーズンを通したチームへの貢献は紛れもない事実だからである。
「どうか彼を強く責めないでほしい」
クロップ監督はそうお願いしたうえで、カリウスへの信頼を強調した。それでもメディアの見出しには“mistakes”や“errors”の文字が並び、最悪なことに匿名のメッセージで非難が集中した。
SNSを中心にカリウスへの殺害予告が相次ぎ、ついにはマージーサイド警察が動き出すまでに発展したのである。もちろんこのようなメッセージを送る者はリバプールどころか、サッカーのファンにカウントされるはずがない。
さらに1失点目の直前にセルヒオ・ラモスと接触して脳震盪を起こしていたと試合後の診断結果が発表されると、ミスとの因果関係を強引に結び付けて非難に拍車をかける者も出た。
「殺人予告を真に受けることはできなかったよ」
カリウスはこうした殺人予告や批判に対して、後にドイツ紙『ビルト』のインタビューで「もっと積極的に対処すべきだった」と振り返っている。
「殺害予告を真に受けることはできなかったよ。メッセージは匿名で、プロフィールに顔も載せていなかったからね。個人的に僕の前を通ったら、口を開くことすらできないと思っている」
「(スタジアムの)ファンが選手に指笛を吹いても、それを責めることはできない。入場料を払っているから、不満を持つ権利がある。プロならそれに耐える必要がある。でも個人的な侮辱や殺害予告は、限度を遥かに超えている」
「(脳震盪の)診断結果が発表されたときに多くの悪意や侮辱があって、時に一線を超えるものもあった。僕は脳震盪を言い訳にしたことはない。でも頭にひどい怪我をした者をからかうような人は理解できない」
レアルとのCLファイナルは一夜にしてカリウスのキャリアを激変させた。それも悪い方向に――。