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「アップデートされた名将」クロップとアンチェロッティ、魅力に満ちたサッカーの極意 戦術はもちろん大事だが…〈CL決勝リバプールvsレアル〉
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2022/05/28 17:00
ユルゲン・クロップとカルロ・アンチェロッティ。アップデートを怠らない2人の名将が率いるリバプールとレアルはどんな試合を見せてくれるか
《モダンフットボールの監督には、ボールや状況、インテンシティ、ストレスといったものをコントロールすることが正統な考えとされるが、カルロ・アンチェロッティ監督は選手たちに決断を委ねる──結果に対する責任はすべて自分が負うことを約束しながら》
つまり、世界一のクラブにはワールドクラスの選手が揃っているのだから、周到な準備をするのは当然としても、試合が始まったら、選手を信じることが何よりも重要なのだろう。
「試合前に相手の選手のことを考えたことは……」
「やることがたくさんあるなか、試合前に相手の選手のことを考えたことは一度もない」と指揮官として史上初の5度目のチャンピオンズリーグ決勝に臨むアンチェロッティ監督は会見で語った。
「私たちは相手をリスペクトするが、自分たちの仕事をしなければならない」
勝負の鍵を握りそうなポイントは、トレント・アレクサンダー・アーノルドとビニシウス・ジュニオールが対峙するサイドが多くのメディアに挙げられているが、個人的には中盤の争いに注目している。
マドリーはこの4年間で選手を入れ替えてきたが、ミッドフィールドにはルカ・モドリッチとトニ・クロース、カゼミーロが健在だ。対するリバプールは、プレミアリーグ最終節に負傷したチアゴが出場できなければ、創造性の面で劣勢を強いられるだろう。
あるいは、クロップ監督のチームでは珍しく即座に適応したルイス・ディアス、マドリーのスーパーサブ、ロドリゴやエドゥアルド・カマビンガの働きが最後にモノを言うかもしれない。もちろん、世界最高のストライカー、カリム・ベンゼマと、世界最高のセンターバック、ビルヒル・ファンダイクの戦いや、トップクラスの指揮官同士の采配なども楽しみだ。
見どころを上げ始めたらキリがない今季の欧州頂上決戦。4年前のキエフと同じカードが、今回はサンクトペテルブルク(ウラジーミル・プーチンの故郷)で開催されるはずだった決勝(ウウライナ侵攻によりサンドニへ変更)で再現されるとは、これもまた別の意味で因縁深い。日本時間5月29日早朝4時のキックオフを、世界中のフットボールファンが待ち侘びている。
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