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「アップデートされた名将」クロップとアンチェロッティ、魅力に満ちたサッカーの極意 戦術はもちろん大事だが…〈CL決勝リバプールvsレアル〉
posted2022/05/28 17:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
Getty Images
凄まじい進化と、不条理にも感じられるほどの勝負強さ──。
4年前の再現となった今季の欧州頂上決戦、そこで対峙する両チームの現在を言い表すと、そうなるだろうか。
2018年5月26日、キエフ(当時はそう呼ばれていた)のオリンピスキー・スタジアムで開催されたチャンピオンズリーグ決勝は、ジネディーヌ・ジダン監督(当時)の統率したレアル・マドリーが、ユルゲン・クロップ監督が束ねたリバプールを3-1で下し、CL史上初の3連覇を成し遂げた。
セルヒオ・ラモスのモハメド・サラーへの「レスリングのような」(クロップ監督)ファウル、GKロリス・カリウスの狼狽、ギャレス・ベイルのバイシクルなど、印象的なシーンの多い一戦だった。会場には身を切られそうなほどの緊張の糸が張り詰めていたことを、はっきりと覚えている。
「リバプールの流儀を貫いてきたんだ」
敗れたリバプールは、そこから凄まじい進化を遂げた。
すでにその頃から欧州トップレベルと呼べるほどのチームになっていたが、この敗北によりさらに士気を高め、守護神アリソンとMFファビーニョを獲得し、翌2018-19シーズンのチャンピオンズリーグを制覇。さらに2019-20シーズンには、30年ぶりにイングランド王者に返り咲いた。
「リバプールの流儀を貫いてきたんだ」とクロップ監督はこの4年間の進化について話した。
「ハードなやり方だ。それだけに、いくつかの大会の決勝では敗れたが、それらから学ぶ必要があった。このような試合でトップレベルの集中を維持できるように」
“カオス”だけでなく“コントロール”も
そして今季、クロップ監督のリバプールは3度目のチャンピオンズリーグ決勝に辿り着いた。前線から激しくプレスをかける手法はそのままに、2年目のチアゴが完全にフィットしたことで、チームはまたひとつレベルを上げている。以前は整然とプレーする相手を壊して畳み掛けるような“カオス”が代名詞だったが、今のチームは自発的に試合を“コントロール”することも得意になった。
今季は2つの国内カップを制し、プレミアリーグでは最終節に勝利を収めながら、マンチェスター・シティが劇的な逆転勝利を遂げたことで2位に終わった。