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「代表にオールスター選手はわずか3人」男子バスケの外国人“鬼コーチ”トム・ホーバスは何を変革している? 新体制を象徴する“ある選手”
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJIJI PRESS
posted2022/05/13 11:00
男子代表でも檄を飛ばすトム・ホーバスHC
「『この道が正しいんだな』と感じられる」
「やはり、『たくさんシュートを打ちたい』とか、『もっと長くボールを持ちたい』と考えるのが普通だと思うんです。卓磨がそれを望んでいないというわけではないんですけど、うちで見せているプレースタイルで、代表に呼ばれ、そのスタイルのままで活躍できましたから。彼にとって、『これが自分の生きる道』じゃないですけど、『この道が正しいんだな』と感じられると思うんです。そこはすごく自信につながるんじゃないかなと」
佐藤は言う。
「僕自身はそこまで器用な選手だとは思っていないんです。一つひとつのことを、時間をかけてやっていくプレーヤーだと考えていて。ただ、他の選手よりは、タフな方だと自覚しているので。そこを基盤に、自信にできているのかなと」
華麗に相手を抜き去ったり、1試合に何十点も決めるような派手なプレーヤーではない佐藤だが、自らの特長にマッチした役割を高レベルに果たして見せる。だからこそ、王者・千葉で認められ、それが新しい日本代表の指揮官にも評価されたわけだ。
オールスターと日本代表の差別化
ホーバスHCが日本代表で各選手の「役割」を明確化して、それをまっとうさせるというアプローチは、理にかなっている。日本代表の強化という競技面で活きるのは間違いない。
ただ、その効果は競技面だけに限らない。興行面、つまり、プロとして試合をファンに見てもらうときに活きてくる。
幸いにして、サッカーではなじまない(Jリーグでも以前はオールスターが行なわれていたが、現在は開催されていない)オールスターが一大イベントとして根付いているのが、バスケットボール界だ。
オールスターゲームでは、派手で、一人で何でもできるオールラウンダーが選ばれて、ファンを喜ばせる。
日本代表戦では、それぞれの役割に合ったエキスパートが選ばれ、チームの勝利に貢献する。
Bリーグには、オールスターには選ばれるものの日本代表には選ばれない選手がいる。その一方で、日本代表では欠かせないけれどオールスターには選ばれないような選手もいる。その両輪があれば、ファンの見どころは増え、バスケットボールを深く楽しめるようになっていく。
ホーバスHCが男子バスケ界にもたらすもの
今週末から始まるのは、Bリーグの総決算となるチャンピオンシップだ。22チームによるレギュラーシーズンで好成績を残した8チームが年間王者をかけて戦うプレーオフの舞台である。
オールラウンダーとエキスパートの競演を、日本代表選手とオールスターに選ばれた選手とのプライドのぶつかり合いを、ファンは楽しめる。
そんなところにも、女子の日本代表に待望のメダルをもたらしたホーバスが男子のバスケ界を変えようとしている効果は表れているのだ。
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