核心にシュートを!BACK NUMBER
「代表にオールスター選手はわずか3人」男子バスケの外国人“鬼コーチ”トム・ホーバスは何を変革している? 新体制を象徴する“ある選手”
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byJIJI PRESS
posted2022/05/13 11:00
男子代表でも檄を飛ばすトム・ホーバスHC
ホーバス体制を象徴している“ある選手”とは?
現在の男子代表で、ホーバス体制の象徴となるのが、王者・千葉ジェッツの佐藤卓磨だ。2月のチャイニーズタイペイ戦のあと、ホーバスHCが賞賛したのも佐藤だった。
「彼は素晴らしいプレーをしました。我々が必要としているプレーをベンチから出ていって、見せてくれました。彼は1on1からの得点を狙うのではなくて、リバウンドやハードな守備をしてくれて、さらにフリーの状態からはシュートを決めた――。
彼は自分の『役割』をわかっているのです」
女子だけではなく、男子の代表でもホーバス体制の下で「役割」はキーワードになる。
佐藤はオールスターには選ばれていないが、彼がどんな選手かは千葉の指揮官の起用法にも表れている。昨季から千葉に加入すると、大野篤史HCから「うちのベストディフェンダー」といわれ、初年度からスタメンを張り続けてきた。
千葉ジェッツHCが伝えた言葉
実は、今季の開幕前に大野HCは佐藤へ、こんなことを伝えている。
「自分の苦手なことにチャレンジすることはもちろん、大切なこと。だけど、自分の持っている本当の武器を磨こうとしないと、卓磨の良さは錆びついていってしまうよ」
佐藤は大野HCとのやり取りの意義をシーズン終盤になった今、かみしめている。
「自分の良さは、走ることや中に切り込んでいくこと。あとは『シュートも良いものを持っているぞ』と大野さんから言ってもらったので。まずはそこに目を向けようとなりました。そうすることで、それ以外の動きも、気づいたら以前より良くなっている感じがあって。大野さんが自分の強みを見てくれて、それをやり続けてきたからこそ今のところ、昨シーズンよりも個人的には良いシーズンを過ごせていると思います」
富樫勇樹の証言「代表に選ばれたことが彼の自信になっている」
佐藤がリーグ屈指のディフェンスのスペシャリストであることは浸透したが、今季はアウトサイドのシュートでも著しい成長の跡がある。
3P成功率は43%で、自身最高を記録した。しかも、昨シーズンの1.5倍の3Pシュートを放ちながらも、36.7%から43%へと確率を上げたのである。
今季は3P成功数が10本足りず(野球の規定打席数に届かない選手のように)リーグの3P成功率ランキングには載らなかったが、ランキング入りすれば5位に該当する成功率だ。このまま成長を続ければ、来季はランキングの上位に名を連ねているだろう。
「卓磨が今のプレースタイルで代表に選ばれたということが、彼にとってすごく自信になっているのではないかなと思っています。それに彼は今のスタイルで、前回の代表でも活躍したわけですから」
そう話すのは、日本代表でも千葉でもキャプテンを務めている富樫だ。チームメイトの佐藤をかたわらで見てきた立場から、日本バスケ界の顔役はこう話す。