箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
ヴィンセントに直撃「レン・タザワのことは意識するか?」…駅伝ファンに愛される“ヴィンちゃん”が見せた自信と謙虚さ
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byShota Matsumoto/adidas Japan
posted2022/05/16 17:00
ドイツで開催された「ADIZERO: ROAD TO RECORDS」に参加した東京国際大学4年のヴィンセント
まさかの途中棄権も「彼らは遠い存在ではない」
レースがスタートしても、アップダウンのあるコースで1km2分40秒前後のハイペースを刻んでいくなかで、先頭集団内にしっかりと好位置をキープ。そのストライドやリズムは、周囲の世界トップ選手のそれと完全に同調しているようにも見えた。
だが、2周目を終えて集団が帰ってくると、そこにヴィンセントの姿がない。どうやら途中で棄権をしたようだ。先頭は26分台を窺うペースで走り続けている。しばらくすると、同行したスタッフと一緒に、落ち込んだ様子でヴィンセントがスタート地点に戻ってきた。
途中棄権で終わったレースで何を感じたのか。そして大学生活最後の1年、どんな目標を立てて走っていくのか。レースの約2時間後、すっきりした表情に変わっていたヴィンセントに話を聞いた。
「思うようにはいかなかったレースですし、この結果は悔しい。たくさんのスター選手たちと一緒になったビッグレースで、プレッシャーというか、緊張もしました。でも今回は僕のコンディションが良くなかった。ドイツに来てすぐにレースでしたし、僕は標高の低い日本から来て、(レースで競った)彼らは標高の高いケニアなどで練習を積んでからここに来た。だから仕方のない面もあるのかな、と思います」
10kmのレースでは、ハーフマラソン世界歴代2位の記録を持つキビウォット・カンディ(ケニア)が26分50秒で優勝。5位までが26分台という大接戦を繰り広げたが、ヴィンセントは一緒に走る中で彼らとの距離を掴んだようだ。
「彼らは遠い存在ではないことがわかりました。まだ差はありますが、それは決して届かないような差ではないと感じました」
では、その差をどう埋めていくのか。そして自らの将来像をどう描いているのか。
幼少期の夢は軍人、では今は?「世界陸上の出場権を獲る」
2020年の年末、Numberでインタビューしたときには、幼少期の夢は「軍人になることだった」と言いつつ、自らの将来についてはこんな風に語っていた。
<走るのは小さい頃から得意だったですけど、本気で走り始めたのは2016年頃からです。そこから少しずつ、走ることで食べていきたいな、と思うようになりました。オリンピックとかフルマラソンとか、今はまだ現実的には考えてないです。僕の身体、そこまでまだ強くないですから。まずは2、3年しっかりと準備して、ハーフ、フルって進んでいけたらいいですね>
いまのヴィンセントにはもっと明確な目標ができていた。