「ああ、勉強しないと大学には入れないんだ」

　あらためて強調するまでもなく、早稲田大学の入試のハードルは高い。真剣に勉強をしてこなかったこともあり、小宮山が高校生のころに受けた模試の合格判定は「20%以下」。野球のレベルも、本人いわく「それなりの高校のそれなりのピッチャー」という程度だった。

「あのころは本当にバカだったんですよ。なんにも考えてなかった。ただ毎日を過ごして、漠然と『早稲田に行きたいなぁ』って思うだけ。自分の学力も野球の実力もどの程度なのか全く把握していないし、しようともしていない。早稲田で野球をやること自体が目標なので、そこに向けてトレーニングをするわけでもない。今思うと恐ろしいですね（笑）」

早稲田大学に憧れてはいたものの、具体的な努力はしていなかったという　©Asami Enomoto

　心の中では「早稲田大学で野球をする」と誓いながら、勉強もせず、野球に必死で取り組むわけでもない。高校3年生の夏、そんな小宮山がさらに“勘違い”をしてしまう出来事があった。

「投手として早稲田の練習会に参加したんですよ。4人1組になって投げるんですけど、そこでたまたま目立って『良い球だったぞ』って先輩に声をかけられたんです。他のグループには甲子園で投げたばかりの吉井理人（後に近鉄バファローズ、ニューヨーク・メッツなどで活躍）もいたので、もし一緒に投げていたら絶対に僕の球は霞んでいたはず。それなのに、先輩の言葉をいいことに『あれ？ じつは俺って優秀なピッチャーなのか？』と思い込んでしまった（笑）。

　その後、11月に早稲田から入試対策の勉強会に誘われたんです。ありがたいことに現役の早稲田の先生や予備校の講師が教えてくれる贅沢なものでした。きっと合格するためのコツを伝授してくれていたんでしょうね。でも僕は、勉強会の誘いが早稲田からのオファーぐらいに思っていたので、ろくに話を聞いていなかった。

　早稲田は毎年野球部に入部する1年生が20人ちょっと。勉強会に参加した人数もそれくらいだったので、全員そのまま入るもんだと勝手に思っていた。でも、勉強なんてまったくしていないので、僕は当然不合格です。そこで早稲田のマネージャーに『残念だったな』と声を掛けられてようやく気づいたんですよ。ああ、勉強をしないと大学には入れないんだ、って（笑）」

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