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《最後の肉声》「あなた方は進歩した」日本のW杯出場を喜ぶオシムの憂いと祈り「実はうまく歩けない」「プーチンは狂信的ですらある」
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2022/05/04 17:04
2021年5月、SKシュトゥルム・グラーツ対レッドブル・ザルツブルクの試合会場を訪れたオシム。旧ユーゴスラビア代表監督などを経て、日本ではジェフユナイテッド市原・千葉、日本代表で監督を歴任した。享年80
――川崎フロンターレと横浜マリノスです。
「以前、川崎の監督をやっていた人物は、今はどうしているのか?」
――それは関塚(隆)のことですか?
「彼のスタイルは興味深かった。ヨーロッパのようなティキタカを目指していた。とてもモダンなスタイルで、サッカーの神髄を極めようとしていた。彼らがさらに進歩することを私は望んでいる」
――それならば風間(八宏)だと思います。風間が現在のフロンターレの原型を作りましたから。
「それからヨーロッパでプレーしている選手たちもいろいろ学んでいるだろう。電話をしてくれてありがとう。しっかり食べて健康でいてくれ。ただあまり食べ過ぎないように気をつけろよ(笑)」
――ありがとうございます(笑)。あなたは食事を済ませましたか?
ボスニアには常に政治問題がある
「済ませて夜の試合を待っている。
ボスニア(フランスと同グループでグループリーグ敗退)に関しては、選手が大きく入れ替わった。今年は多くの選手が去って行った。これからどうなるかわからないが、現状の選手たちでやって行くしかない。他に選択肢はない。私たちの国には政治問題が常にあり続けている。すべては政治の対立から生じている。誰が代表でプレーするのか。セルビア系なのかクロアチア系なのか、それともボスニア系(ムスリム系)か……。監督(ブルガリア人のイバイロ・ペテフ)にとってはとてもデリケートな問題だ。選手のことをよく知ってもいない。行き当たりばったりで選んでいるだけだ。
日本のみなさんにくれぐれもよろしく伝えてくれ。君ともできるだけ早く会えるといい。これからワールドカップをはじめいろいろなことがある。一緒に見たいし何かできることをやりたい」
――それであなたはどうなんですか?
「実はあまりよくない。うまく歩けないからだ。膝が悪くて……、以前のように歩くことができない。手術が必要と言われているが……。膝と靭帯の手術だ。もしも靭帯が完全に破損したら、歩行が不可能になるし何もできなくなる」