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トレード危機の男が“落合博満から3奪三振”…元阪神・仲田幸司に聞く“9年目の覚醒”はなぜ?「藤浪晋太郎の気持ちがよくわかりますわ」
text by
岡野誠Makoto Okano
photograph byKichi Matsumoto
posted2022/04/21 11:00
「僕は、藤浪晋太郎の気持ちがよくわかりますわ」。元阪神・仲田幸司の半生に迫った
背水の陣で臨んだ3月13日のヤクルト戦、先発で7回無四球、無失点で切り抜ける。この時は“例年通りの年1回の好投”と揶揄されたが、25日のオリックス戦でも11奪三振で完封勝利を果たし、オープン戦の防御率0.43で開幕ローテーションに滑り込んだ。そして、4月14日先発2試合目の大洋戦で、5回3失点ながらもシーズン初勝利を挙げる。プロ9年目で初めての4月白星だった。
「内容自体は良くなかった。でも、良い投球で負けるんじゃなくて、悪くても結果が出るほうが嬉しい。『今年はイケるかもしれない』と乗れましたね」
落合博満を3連続三振…14勝の92年
4月25日の中日戦でさらに自信を深める。主砲の岡田彰布に『代打・亀山』が送られてチームに緊張感が走ったこの試合で、4番・落合博満から3打席連続三振を奪ったのだ。
「僕の記憶では、追い込んでから3打席ともド真ん中のストレートですわ。山田(勝彦)のサイン通りです。落合さんも『まさか……』と思ったはずですよ。懐が広くてどこに投げても打たれそうなイメージを持っていたので、めちゃくちゃ自信になりました」
5月は5勝1敗、防御率1.80で初の月間MVPを獲得。新庄がプロ初ホーマーを放った大洋戦では、無四球完投勝利を収めた。監督推薦で初めてオールスターにも選ばれ、初戦に3回無失点5奪三振で優秀選手賞に輝く。この年、仲田はプロ入り初の2ケタとなる14勝を挙げ、奪三振王のタイトルも獲得。9年目の開花に、阪神ファンは拍手喝采を送った。
しかし、仲田の覚醒は92年だけに終わる――。(中編へ続く)
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