一方で、松川もいいですよねと水を向けても、「うーん、あの体だからねぇ……」とか、「低めの捕球でミットが垂れる」とか、「バッティングはいいけれど……」とまるで芳しくなかった。

　さらに突っ込むと、そこからはあいまいな返事しか返って来なかったので、実はあまりよく見ていないか、受け売りのコメントなのかな……と解釈していた。

　もし、松川捕手が別の高校にいて、平均的な投手とバッテリーを組んでいたら、もっと評価は高くなっていたはずだ。ドラフトでも「1位重複指名」があったほどの存在になっていたかもしれない（実際はロッテの単独1位指名）……と、そこまで書いて、いや、待てよ……組んだ相手が小園投手だったから、松川捕手のスキルもあれだけ磨かれたともいえるよな……。反証すると、別の想像がたちどころに広がっていく。これだから、野球は面白い。

ドラフト候補ベスト10の「第3位」に

　去年の5月、『2021ドラフト候補ベスト10』と称して、投手と野手を10人ずつ、1位～10位まで順番をつけてリストアップする、という大胆不敵なコラムを書いた。

　その「野手編」で、私は松川捕手を「第3位」に挙げた。高校、大学、社会人、独立リーグすべてのジャンルの野手の中で、その上から3番目に、自信を持って高校生の捕手を挙げた。

　誰も本気にしてくれなくて、なかには笑った人もいたが、「キャッチャーを見るのは、意外と難しいんだな……」と、私はわりと平気だった。

　その時の私の「松川評」をそのまま引用すると、このようになる。

＜第3位・松川虎生　捕手　市立和歌山高　178cm100kg　右投右打

　フッと思うことがある。剛腕・小園健太は捕手が「松川虎生」でなくとも、同じようなピッチングができるのか？　松川捕手以外とのバッテリーになった時、果たしてどんな「投手」になるのか？　それほどに、この2人は「黄金コンビ」に見える。

　たとえば、横山やすし・西川きよしの絶妙に息の合った「しゃべくり漫才」のような「テンポと間」のよさ。2人の間に無言の会話があるようだ。乗ってきたな……と思えば、速球連発の3球勝負で三振にきってとるリード勘の良さ。体重100キロが全く重く見えない守備ワーク。ファーストプレーの一塁悪送球カバーリングで二進の打者走者をストライクスローで刺せば、二塁牽制動作の下半身の弾力とフットワークのすばらしいこと。帰塁する走者がスライディングをあきらめるほどの圧倒的スピード。中堅から右中間方向に痛烈な打球を求めるスイングスタイル。

　通算35弾（※昨年4月21日現在）、飛距離150ｍ級のパワーも発揮して、昨年西武ドラフト1位・渡部健人がそのまま重なる。快打もさることながら、ヘッドアップするほどのフルスイング……いや、オーバースイングの空振りでも、体勢を崩さないボディバランスの優秀さが何よりの可能性だ。＞

佐々木朗希の160キロが抜けた、そのとき…

　春季キャンプの、日本ハムとの練習試合。

　ルーキーマスクの松川虎生が、佐々木朗希投手とバッテリーを組んだ。

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