マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
なぜ高卒新人18歳が「佐々木朗希の相手役」になれたのか? ロッテ松川虎生、2年前に和歌山で聞いた“高2の捕球音”が忘れられない
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2022/04/15 17:04
プロ野球28年ぶりの完全試合を達成した佐々木朗希(20歳)と松川虎生(18歳)のバッテリー(写真は4月3日)
二塁手からの一塁送球が大きく逸れて、バックアップした松川捕手が一塁側フェンス前から二塁に投じたロングスローはドンピシャのストライク。
送りバント空振りで飛び出した二塁走者を刺しにいったけん制動作……腰を割った低い姿勢からの光線のような送球のすばらしさ。
そして終盤、2死二、三塁のピンチ。逆にプレッシャーを感じている打者を見抜いて、3球勝負の「146キロ」で打ち取ってきり抜けた瞬間、私は、江の川高・谷繁元信(元・大洋ほか)や平安高・炭谷銀仁朗(現・楽天)……かつて、高校からプロ入りしてまもなく一軍でマスクをかぶった捕手の逸材たちの「高校時代の記憶」を探しに行っていた。
市立和歌山高で小園投手とバッテリーを組んだ松川捕手には、大きな「得」と「損」があったように思う。
小園投手の一級品の快速球と変化球を、中学以来の長い間受け続けられたことは、間違いなく、松川捕手の大きなアドバンテージとなっていた。
とりわけ、高校2年生の秋以降の、猛烈な勢いと低めの伸びを兼ね備えた小園投手の快速球と、ホームベース上で鋭く変化するカットボールに、ツーシームに、スプリット。すでに十分にプロのレベルにあり、高校球界No.1の完成度にあった小園投手の全力投球を日常的に、当たり前のように受けてきた松川捕手は、「佐々木朗希の相手役」として、同期の捕手の中でいちばん近い場所にいたことになる。
佐々木朗希という稀代の剛腕とバッテリーを組むというのは、人の想像をはるかに超える苦労と努力があったろう。しかし、受けてビックリの「カルチャーショック」は、同期のほかの捕手が組むより、小さくて済んだはずだ。
プロ野球スカウト「うーん、バッティングはいいけれど…」
一方で、市立和歌山高の松川捕手が「損」をしていたこと……(今となっては、どうでもよいことかもしれないが)それは、バッテリーを組んだ小園投手が、「高校No.1」と評される逸材だったことだ。
「バッテリー」という単位において、「捕手」の存在感は3対7……いや、もっと小さいだろう。
スカウトが見に行く場合、「キャッチャーもなかなかだよ」と聞いてはいても、いざ小園投手の剛球と投げっぷりを見てしまったら、そちらにくぎ付けでも、ムリはない。
捕手目線で思うのは、捕手が松川だったから、小園投手がよりすばらしく見えたんじゃないか……そんな問いだ。
昨年夏の甲子園、何人ものスカウトの方たちが、「最後の夏に、甲子園で投げる小園を見たかった」と残念がっていた。