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核心にシュートを!BACK NUMBER
“移籍前はメンタルも落ちていた”香川真司33歳が赤裸々に明かす現状「理不尽に思えるくらいの練習も」〈単独インタビュー〉
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph bySTVV
posted2022/04/15 17:02
21-22シーズン、ベルギーのシント・トロイデンでプレーした香川真司
「うちの監督も最終的には4ー3-3を採用して、そういう戦い方を採用したいと話していました。ロングボール主体のサッカーをずっと続けるのであれば、オレを取る意味もないですから」
――インサイドハーフでチームをコントロールするような仕事を期待されているようですね?
「攻守両面で数多く関与していきたいという気持ちは強いです。オレ1人だけの力でサッカーの内容を変えられるほど簡単ではないけど、小さいことの積み重ねで、最終的にチームに大きな変化をもたらせればいいなと考えているので」
――シント・トロイデンのホラーバッハ監督は、ドイツでもっとも厳格で、ハードな練習を課す監督として知られるマガト監督の下で5年半にわたって(ボルフスブルクとシャルケで)アシスタントコーチを務めていた人ですが……。
「そう! ここで最初の1週間くらいやったときに、頭のイメージと実際の身体の動きが大きく違った。週初めの練習の走り込みがものすごくハードで。『これ、毎週の初めにやるの? 今回だけ?』とチームメイトに聞いたくらいでしたからね」
理不尽に思えるくらいの練習をやることも、神様から……
――それはおそろしいですね(笑)。
「ただ、不思議なもので、その練習をやればやるほど、コンディションが上がっていったんです。練習量に関しては間違いなく、ヨーロッパに来てから最も多いですね」
――ヨーロッパでの12シーズン目にして、そんな体験をするとは……。
「ただ、『それくらいのことをしないとダメだ』とも思っていて。普通にやっているだけでは、現状は何も変わらない気がして。理不尽に思えるくらいの練習をやることも、『攻めに行けよ!』と神様から言われているのかもしれない。そうやって物事を捉えられたら気持ちが楽になるというか、前向きになっていきましたね」
――FCみやぎで過ごした中高時代や、高校3年生に上がる直前に加入したセレッソ大阪でのルーキーイヤーのようですね。まるで原点回帰しているというか……。
「そうかもしれないですね。こういう環境に身を置いたことで、シンプルだけど一番大事な、サッカーができる喜びを蘇らせてもらっている。だから、良い方向に行っているんじゃないかなと」
必ず成功できるとオレは信じているので
――今回の決断については様々な意見がありますが、良い選択だったと胸を張れるそうですか?
「サッカー選手として成功か失敗かは、みなさんに数字や試合内容から判断してもらったほうがいいでしょうね。でも、自分の中では、この選択への後悔は全くないです。
何より、結果を残すまでのプロセスを最高のものにして、もっと成長したいという気持ちを燃やし続けられると感じています。それがある限り、成長し続けられるだろうし。成長を続ければ、必ず成功できるとオレは信じているので」
レギュラーシーズン最終節でスタメン出場した香川は、1アシストを記録して、ベルギーのメディアから最終節のベストイレブンや、最終戦のマンオブザマッチに選ばれた。また、香川加入時にはリーグ14位で残留争いに巻き込まれていたチームの成績も向上。プレーオフの最後のイスを掴んだ8位ヘンクと勝ち点差なしの9位(※得失点差で及ばなかった)でシーズンを終えた。
キャリアを積み、年齢を重ねれば、モチベーションや、成長への意欲が少しずつ下がってしまいがちだ。さらにそれが枯れてしまえば、プロアスリートとして生きていけなくなる。
だが、香川は目標までのプロセスを最高のものにすれば、枯れることのないエネルギーを手に入れられると信じている。それが、新しい環境に対してきわめて前向きに向き合えている理由だろう。
後編では、香川が描くこれからの展望と日本代表について語ってもらった。
<後編に続く>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。