中学時代に湖北ボーイズでともにプレーした近江のキャッチャー・大橋大翔は、初打席の2回、初球144キロのストレートにチェンジアップと緩急を付けられ、最後は143キロのストレートで翻弄された。「元先輩」が前田のボールの唸りに舌を巻く。

「強気のピッチングは変わっていなかったですけど、球の質、コントロールが上達していて、いいピッチャーになっていました」

　この試合、初めて得点圏にランナーを背負った3回2死二塁の場面では、バッテリーが重視する制球ベースのピッチングが光る。

　3球連続スライダーからストレート。最後もスピードを抑えた132キロのストレート、しかも全球外角という大胆な配球で、近江の1番・津田基を見逃し三振に斬った。

近江打者「今まで戦ったピッチャーと何が違うかって…」

　準決勝までの打率4割2分1厘と、近江打線を牽引してきたリードオフマンは、そのピッチング以上に前田の気高い風格を見ていた。

「今まで戦ったピッチャーと何が違うかって、ストレートや変化球の切れはもちろんですけど、マウンドの立ち姿とか表情が、1つ下とは思えないほど堂々としていました。去年も甲子園で投げた山田（陽翔）も、『よく堂々と投げられてんな』って近くから見ていて思っていましたけど、同じ匂いというか。落ち着いているように見えても、威圧感というか闘争心を感じました」

　7回を投げ失点1。被安打2、四球1、奪三振11。前田は2試合で1失点、ヒットも3本しか許さなかった。奪三振も23個と、13回のイニング数をはるかに上回った。突出した数字に、周りは大阪桐蔭の背番号11を「エース」と称える。

「ビッグ4」から一歩抜け出した存在に…

　前田はその肩書を否定しつつも、パフォーマンスについては控えめに及第点を与えた。

「自分はエースとは思っていなくて。与えられた試合で投げるピッチャーがエースだと思っているので。今日（決勝戦）は自分の力を出し切れたかなって思っています」

　秋の「のびのび」からの一歩先。

　噂の「ビッグ4」は甲子園で相手の戦意を奪い、観衆の視線を釘付けにした。

　名門・大阪桐蔭の2年生左腕。

　前田悠伍はもはや、4巨頭を超えた存在。

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《センバツ》“ビッグ4”長打ゼロの麟太郎・真鍋・佐倉、甲子園デビューで見えた“未熟さ”とは？ 残した言葉は「センスがない」「対応力がない」

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