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「短期間で世界はこんなに変わるんや」石川祐希とのセリエA日本人対決を終えた高橋藍が心境を語る《胃がん告白の藤井直伸への想いも》
text by
高橋藍Ran Takahashi
photograph byRan Takahashi
posted2022/03/10 11:01
世界最高峰と言われるイタリア・セリエAで、石川祐希が所属するミラノと対戦したパドヴァの高橋藍。「やっと会えた」と日本人対決を振り返った
いろいろと考えさせられる出来事が多くあった中、楽しみなこともありました。待ち望んでいた、石川(祐希)選手との対戦です。
2月27日、パドヴァで行われたミラノとのホームゲーム。僕がイタリアに来て、日本人選手がいるクラブと対決するのは初めてだったので、個人的にも本当に楽しみな試合でしたし、イタリアでも“日本人対決”には高い関心を寄せていただきました。イタリア国内だけでなく、オランダやドイツにいる日本人の方も含め、会場には多くの方々が訪れて下さったのも本当に嬉しく、力になりました。
アタッカーとして1本でも多くスパイクを打ちたい、決めたいという思いは強く持っていましたが、その日の試合で僕のポジションはリベロ。映像を通して試合をご覧になり、驚かれた方も多かったのではないでしょうか。
実はその3日前、監督から「話がしたい」と呼ばれ、「リベロとして出場してほしい」と告げられていました。
「正直に言えば、複雑でした」
理由は明確です。パドヴァは現在12位。降格圏内でもあり、西田(有志)選手が在籍する11位のビーボとの次の試合に勝つか負けるかで、降格か、残留かがほぼ決まると言っても過言ではありません。いわば、追い込まれた状況に立たされています。
昨年末から僕も加入し、ここ数試合は途中出場でチャンスを与えていただき、僕自身はもっと試合に出たいと思ってきました。でも負けられない試合が続く中、監督の構想、チームの共通認識として「リーグ前半にチームがうまく回っていた時のメンバーで固めたい」という考えが強くなっていたのも現実です。一方で、僕のレシーブ面は非常に高く評価してくれていた。そこで監督からは「ディフェンス面を安定させるためにもリベロとしてフル出場してくれないか」と伝えられました。
正直に言えば、複雑でした。
練習から自分でもレシーブ面はアピールできていたと思うし、評価していただいたのは単純に嬉しい。でもスパイクの評価はまだまだ低いのか、と感じたのも事実です。悔しさもありました。
だけどそこですぐに切り替えられたのは、自分は何のためにイタリアへ来たのか、と改めて考えた時、1つの答えがあったからです。