武尊は“キャリア最高の状態”でリングに上がることになる

　元K-1王者で、現在はボクシングに転向し3連続KO勝利中の武居由樹は、この大会の解説を担当。武尊の印象として、まず蹴りのスピードが上がっていると語った。武居は2月に所属する大橋ジムで武尊とスパーリングを行なってもいる。そこで感じたのは、武尊の圧力の強さ。前に出ることで自分のペースに巻き込む力があるという。その圧力が「動きながら闘う天心選手に対してどうなるか」とも。

　いつもより軽い体重で「スピードやキレ」は増している。加えてパワーや圧力が落ちなければ、武尊はキャリア最高の状態でリングに上がることになるだろう。それは軍司とのエキシビションで長所と修正点を確認できたからだ。

エキシビション後には互いを称え合った二人　©Takao Masaki

　またこのエキシビションは、武尊にとってK-1ファイターであることを再確認する場でもあった。

「K-1最高！」

　リング上で武尊はそう叫んだ。いつもの決め台詞だ。ただ、過去2戦は違った。「格闘技最高！」だったのだ。一夜明け会見で、武尊はその意味を解説した。

「6月も“K-1最高！”って言おうと思ってます」

「以前は格闘技界が一つになれていなかったので、格闘技界は一つなんだよと伝えたくて“格闘技最高！”でした。今は実際に、格闘技界が一つになる大会が決まって、あらためてK-1のリングに戻ってきたので“K-1最高！”と言わせてもらいました。僕の中で昨日、K-1のリングに上がったのは凄く大きなことだったので。6月も“K-1最高！”って言おうと思ってます」

　武尊は30歳。旧K-1でのアンディ・フグたちの活躍を子供時代に見て憧れた世代だ。だが自分がプロ格闘家になった時にはK-1旧体制がなくなっていた。KrushでKOを量産し、ベルトを巻き、そこから系列イベントとして新生K-1が生まれる。K-1は武尊にとって憧れであり、身体を張って育ててきた舞台でもあり、常にK-1の強さを証明するために闘ってきた。だから負けられなかった。新生K-1旗揚げ以降、武尊は全勝である。

「一度でも負けたら引退する覚悟でやってきました。毎回そうです」

　那須川天心との試合を実現させたい。格闘技界を一つにして、そのパワーを世間に示したい。ここ数年はそんな思いだった。だが“世紀の一戦”が決まった今はシンプルにK-1を背負い、K-1の仲間とファンに背中を押してもらえばいい。

「東京ドームで待ってます」

　武尊は那須川にエールを送った。那須川は4月2日に“RISE卒業マッチ”を控えている。武尊はもう一直線だ。“K-1ファイター”として、あるべき姿で6月のリングに立つことができる。本来あるべき姿で那須川と対峙するためにも、K-1での軍司とのエキシビションは必要不可欠なものだったのだ。

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