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名作「クール・ランニング」で話題…ボブスレージャマイカ代表が24年ぶりに五輪に帰ってきた話〈ボルトはメンバー入りを辞退〉
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byGetty Images
posted2022/02/11 11:02
名作「クール・ランニング」の奇跡が再び起こった。24年ぶりにジャマイカ代表が冬季五輪のボブスレーに帰ってきたのだ
まずキャプテン的な存在は、パイロットを務めるションウェイン・スティーブンス。生まれはジャマイカだが、12歳の時にイギリスに移住。現在はイギリス空軍に従事する軍人でもある。
ちなみに軍ではスナイパーとして訓練しているというが、優しそうな風貌や親しみやすい笑顔からは、そんな鋭さは見受けられない。
「2014年にイギリス空軍でボブスレーをする機会があったんだけど、一瞬で恋に落ちた」と競技に取り組んだきっかけをこう話す。
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レイド、ターゴット、マクファーソンはジャマイカ生まれのジャマイカ育ち。2016年まで陸上の短距離選手だったが、その後にボブスレーに転向。寒さに慣れるのが大変だったというが、五輪の夢を夏ではなく冬で成し遂げた。
ワトソンとウェクペはジャマイカとイギリスの国籍を持つ選手。ウェクペも陸上の経験があり、運動神経は抜群。ワトソンはボブスレーでイギリス代表としても活躍していた経験を持つ。2017年に競技を引退し、アスレチックトレーナーとしてイギリス代表に帯同したりしていたが、ジャマイカの選手たちに力を貸してくれと誘われ、今度はチームを変えて氷上に戻った。
ジャマイカボブスレー連盟はリオ五輪後にウサイン・ボルトの勧誘も試みている。陸上の試合でも寒さが苦手だったボルトは、「寒いところは無理、無理、無理」と競技は断ったものの、資金面などでチームのサポートをしているという。
古典的すぎる練習法にあのエリザベス女王が大爆笑
平昌大会の代表権を逃し、北京五輪に向けて動きだした彼らを襲ったのはコロナだった。
どのスポーツに関わらず、世界中の多くの人が練習場所を失った。ジャマイカ在住の選手たちはウエイトトレーニングの施設や芝生などで練習はできたが、イギリス在住の選手たちはすべての施設が閉鎖になり、練習場所がなくなってしまった。自宅の庭にウェイト練習場を作って体づくりに努めたが、ボブスレーの実践練習ができない。
そんな中で、イギリス空軍のスティーブンスが編み出した練習方法、そしてそれが世界に広まった理由はとてもユニークだ。
コロナ禍にエリザベス女王がイギリス空軍やほかの部隊のメンバーとオンラインで会談を行った。幸運なことにスティーブンスも謁見する機会に恵まれ、その他3人のメンバーが順番に職務やコロナ禍の状況などについて話し、会談は淡々と進んでいた。そこで、スティーブンスは自分の番になると、笑顔でこう切り出した。
「実は自分はジャマイカのボブスレー代表でもあるんです」