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原大智「金メダルを取れたのに……」
男子モーグル初の銅もただの通過点。
posted2018/02/14 12:30
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
Sunao Noto/JMPA
「この五輪は僕のモーグル人生の分かれ道になる」
日本男子モーグル界に初の五輪メダルとなる銅メダルをもたらしたのは、五輪3週間前にあった代表決定会見で、背筋を伸ばしてそう言った20歳の青年だった。
長野五輪のフリースタイルスキー女子モーグルで北海道東海大3年(当時)の里谷多英が金メダルを獲得し、日本中に「モーグル」を知らしめた1998年2月11日から丸20年がたった2018年2月12日。
幼少時からスキーにいそしんでいた原大智(日大1年)が、歴史に新たな1ページを記した。
「実感がない。本当に自分が銅メダル取ったのかなと、すごく今、そう思っています」
快挙から一夜明けた13日朝、メダリストは静かな口調でそう言った。
それでも周囲の反応のすさまじさには驚いたようで、「普段しゃべったことのないような人からもSNSでお祝いメッセージをもらった。ゆっくり、ゆっくり返していこうと思います」
モーグル人生の分岐点を超えたばかりの若者は、笑顔を浮かべていた。
五輪に向けて用意していたオリジナル技。
「僕のオリジナルである『コークセブンのグラブ』を平昌五輪で見せつけたい」
原は、昨年12月のW杯中国大会で初めて使った技を五輪の武器として挙げていた。
W杯で一度も表彰台に上がったことのなかった彼にとって、第1エアで使うこの技が、銅メダル獲得のカギとなった。
「使い始めたときはランディング(着地)が甘かったが、そこを意識し始めたら点が上がった。安定させたらもっと点が出ると思っていた」