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34歳シーズンに浦和新加入の岩尾憲「サッカー界の流れも変え得る働きを」 “遠藤保仁的なスキル”と若手への好影響《キャンプ現地レポ》
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAtsushi Iio
posted2022/02/07 17:01
34歳となるシーズンに浦和加入を決断した岩尾憲。その覚悟は非常に強いようだ
なるほど、右足の前にボールを置いてやや半身で状況を窺う姿や、プレッシャーを受けてもポーカーフェイスを崩さず淡々とパスをさばく様子、その際にパススピードや味方のどちらの足にボールを届けるかにまで気を配るところなど、たしかに日本屈指のプレーメーカーを彷彿とさせる。
小泉によると、ゲームを読む力、攻め筋をイメージする能力にも優れているようだ。
「岩尾選手は練習中に『やり直せ』って何度も言うんですよ。何回もやり直して相手を動かすことへのこだわりがすごい。やり直すうちに敵がズレて崩れてきて、そのズレを突けるというイメージがあるからこそ、『やり直せ』という声が出るんだと思うんです」
岩尾の助言を聞いた若手も「なるほど」と
そうした鋭い視線が味方に対しても注がれていることは、例えば、プロ2年目の大久保智明のこんな言葉からうかがえる。
「岩尾選手と夕食をとっていたとき、『どうやったらトモが良くなるかが分かってきた』と言われ、裏に抜ける動きを増やすことでゴールの確率が上がると教えてもらいました。日本代表でも、伊東純也選手は裏に抜ける動きが多いからゴールに近い位置でプレーできるんだと思う。自分は足元でボールを受けようとするタイプでしたけど、裏への動きも増やしていければ、もっとゴールを取れるのではないかと思います」
かつて岩尾も在籍していた水戸ホーリーホックから昨夏に加入した平野佑一は、プレースタイルが似ているだけに、岩尾から学ぶことも多いようだ。
「ビルドアップの際に、岩尾選手は外に出すふりをして、相手がプレスを止めようとした瞬間に前を向く。その駆け引きがすごくうまくて『なるほど』って」
このコメントひとつ取っても、岩尾が単なる戦力以上の存在であることがわかる。平野だけでなく、柴戸海、伊藤敦樹、安居海渡といったボランチ陣にとって最高の手本となるに違いない。
徳島を離れる決断は簡単な決断ではなかったはずだが
6年間在籍し、仲間達と困難を乗り越えながらチームを作り上げ、J1昇格とJ2降格を経験した徳島を離れるのは、簡単な決断ではなかったはずだ。今回、期限付きでの加入となったことにも、さまざまな事情があるのだろう。
しかし、岩尾はきっぱりと言う。
「僕はここに遊びに来たわけでも、思い出を作りに来たわけでもありません。日本を代表するようなクラブ、大きな転換期を迎えているクラブで、リカルド監督のもと、自分に還元できることが少しでもあるなら、それをやりたいと思って来ました」
と同時に、プロ12年目を迎える今回のチャレンジは、似た境遇でプレーする選手たちに対するメッセージでもあり、エールでもある。