それ以来、日本を代表するメジャーリーガーと無所属の無名選手の交流が始まった。小山田は「大げさではなく、ダルビッシュさんは私の命の恩人です」と語る。

「テキサスまで呼んでもらって、リハビリの施設を見せていただいたり、アドバイスをいただいたりしました。今こうしてアストロプラネッツに入れて、オンラインサロンで情報を発信できているのも、ダルビッシュさんのおかげです」

　小山田は1年の浪人生活を送った後、BCリーグの武蔵ヒートベアーズ（現埼玉武蔵ヒートベアーズ）に入団。だが、今度は右肩を痛めて2年間で現役生活を終えた。リハビリの合間を縫って勉強し、傷害予防とスポーツパフォーマンス向上を目的としたCSCSとCESの2つの資格を取得した。さまざまな知識と経験を得た今でも、ブルペンに入れば最速148キロをマークするだけの能力がある。

　そんな小山田の存在を知り、「指導を受けたい」と入団を希望する投手もいる。

「本人は『170キロを投げたい』と言っています」

　今季、茨城アストロプラネッツには高橋康二（前福井ワイルドラプターズ）、森祐樹（前群馬ダイヤモンドペガサス）、楢崎塁（前徳島インディゴソックス）、菅谷潤哉（前富山GRNサンダーバーズ）、二宮衣沙貴（前琉球ブルーオーシャンズ）と、一度はドラフト候補と呼ばれた有望独立リーガーが集結している。

　チーム成績だけを見れば2019年の球団創設以来3年連続で地区最下位に沈んでいる茨城だが、2021年度は外国人選手を含めNPB球団に4名の人材を送り込んでいる。そこへ松田のMLB球団マイナー契約というニュースが重なった。

「松田は『170キロを投げたい』と言っていますし、もともと『世界一の野球選手になりたい』と熱量はものすごいです。ドジャースには世界一の施設がありますから、しっかりトレーニングを積めば、170キロだって夢ではありません」

　そう語る小山田の目は希望に満ちていた。

　茨城でひっそりと脈打ち始めた胎動は、今や肉眼ではっきりと見えるほど大きなムーブメントになりつつある。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。