酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
〈祝結婚〉稲垣啓太のお相手、新井貴子さんの父・新井宏昌69歳が偉大… 2000安打達成+イチローや丸佳浩らの師匠+解説名人
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySports Graphic Number
posted2022/01/27 17:01
結婚を発表した稲垣啓太。お相手の新井貴子さんの父・新井宏昌(広島コーチ時代)は偉大な野球人だ
《投手の球は、どうしても手元へきてスピードが落ちます。でも終速の落ち方が、打者の想像よりも小さいと、打者は切れがあると感じます。》
「では新井さんが対戦した投手で切れがあったのは?」と聞かれると……。
《村田兆治さんは、(終速が落ちず)低めに伸びがあるから、僕たちがボールだと思った球でも、審判がストライクということが多かったです。》
このように、即座に答えている。
Aロッドの打撃が好きだと語っていたワケ
新井宏昌はアレックス・ロドリゲスの打撃が好きだと、独特の表現で語っている。
《アレックス・ロドリゲスの左手の使い方が大好きです。左手で振りぬき、強い右手を使いすぎません。右手を早く離しているでしょう。首位打者を取って日米野球に来たときは、線が細くて本当にこれが首位打者かな、と思いましたが。》
ブルージェイズ時代の強打者エドウィン・エンカルナシオンが微妙な速球を見逃すと……。
《同じ球が来た。でもボールだからやめておこうというのができるのがいいバッターですね。》
不振が続く選手には辛辣で、レイズの新人内野手テイラー・モッターが攻守でもたつくのを見たときには、このように話していた。
《このところ、モッター選手のまずい守備と三振をたくさん見ていますね。モッター選手は遠いところに立って打っています。外からアウトサイドの球を捕まえに行っている。これでは打てるはずはないですね。》
吉田正、ダルなど的確かつユーモアを交えて
絶好調のオリックス吉田正尚が新井と同様、非常に三振が少ないことについては、
《吉田選手は、反動で打ちに行くようなタイミングの取り方をしていませんね、反動で打つのではなく無駄な力を入れずに投球をじっくり観察してバットを出しています。》
穏やかな口調の関西弁。大げさなことを言わず、誠実で、正確な物言いに徹していたが、そこはかとないユーモアが漂うこともあった。
《ダルビッシュ投手とは面識はありませんが、神戸の北野坂の近くにダルビッシュ館があります。私の家の近くなので、がんばってほしいですね。》
細身で端正な風貌の新井宏昌が、小山のような大男の稲垣啓太から「お父さん」と呼ばれるのはなかなか面白い。「笑わない男」と言われる稲垣だが、岳父から声をかけられればどんな返事をするのかと思う。
指導者として引く手あまただった新井宏昌は、素晴らしい解説をしたかと思ったらすぐに球団に招かれてコーチになってしまう。聞けるときに聞いておかないと――といつも思ったものだ。
2020年にソフトバンクを退団し、NHK BSの解説者に返り咲いた。69歳になるが、その明晰な頭脳はいささかも衰えていない。またどこかの球団から声がかかる可能性は大いにある。
今シーズンも新井宏昌の解説の試合は必見である。
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