酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
〈祝結婚〉稲垣啓太のお相手、新井貴子さんの父・新井宏昌69歳が偉大… 2000安打達成+イチローや丸佳浩らの師匠+解説名人
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySports Graphic Number
posted2022/01/27 17:01
結婚を発表した稲垣啓太。お相手の新井貴子さんの父・新井宏昌(広島コーチ時代)は偉大な野球人だ
イチローや川崎、丸らのセンスを見抜いたコーチング
1994年にオリックスの打撃コーチとなるが、この年、入団3年目のイチローの打撃の非凡さを見抜いて、これも新任の仰木彬監督に起用を進言したという。この年イチローは130試合制で新井宏昌の記録を大きく破る210安打を記録。衝撃的なブレークを果たした。
イチローの打撃の師匠と言えば、マンツーマンで打撃を指導した河村健一郎の名前もあがるが、イチローのフォーム、打法をそのまま容認し、それを大きく伸ばしたのは新井宏昌だろう。
新井とイチローは同じ右投げ左打ちの小柄で俊足の外野手。新井は無造作にバットを担いで最短距離でバットを出して、いとも簡単そうに安打を打っていた。イチローとは打法はかなり違っていたが、好打者として通じる部分はあったのだろう。
川崎や丸、菊池らも育て、解説者としても名声
オリックス退団後も新井はダイエー、ソフトバンク、広島などで二軍監督や打撃コーチを務める。その打撃理論と指導法は高く評価されていて、村松有人、川崎宗則、丸佳浩、菊池涼介、松山竜平などを育てた。
その合間に民放やNHKの解説者を務めたが、筆者は新井宏昌の解説を聞くのが大好きだった。NHKではBSでMLBのオフチューブの解説者を務めることが多かったが、見事な言葉を残している。
例えば田中将大。ヤンキースに移籍した当初「ギアチェンジ」と言われる155km/h近い速球を投げていたが、右ひじ靱帯を部分断裂しPRP療法(温存療法)で治療してからは、ギアチェンジを投げなくなった。このデメリットを新井はこう説明した。
《速い球があると打者はそれにタイミングを合わせようと準備しなければならないんです。それがないと打者は安心して打席で構えることができます。速い球の残像が残ると打者は、一瞬ですが構えが遅くなるんです。
速い球がなくなったことで、田中投手の投球に打者は合わせやすくなったんですね。それに速球を見せることができないから、スプリッターを見逃されるんですね。》
その一方で技巧派になった田中の投球をこう評価している。
《田中投手は野手のシフトをよく見て、その方向に打球を打たせるように配球しているんです。それができるんですね。》
期待感が大きかったからか、田中将大に対しては整然とした語り口ながら、時おり辛口のコメントが出ていたのが印象的だった。
《試合に勝って文句はないのですが、左打者に(いい)スイングをされているのが気になりました。》
そのほかにも、切れのある球とはどういう球か、とアナから尋ねられると、このような感じだ。