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高校サッカーPRESSBACK NUMBER
あの高校サッカー得点王は今…わずか2年でJリーガーをクビになった“その後”「中古車販売営業を10年やって、今は草サッカーが楽しい」
text by
栗原正夫Masao Kurihara
photograph byJ.LEAGUE
posted2022/01/28 12:31
ジェフ市原時代の森崎嘉之。1996年6月1日、ナビスコカップ対アビスパ福岡戦。この試合が所属2年間で唯一の出場機会だった
“サッカーを続ける子”と“やめちゃう子”の差
一度サラリーマンとして働き、またサッカーの現場に戻ってきたことで見方や付き合い方も変わってきた。森崎が代表を務めるサッカークラブには、小中学生合わせて約150人が所属しているが、指導する上で大切にしているキーワードは楽しむこと。みんながプロになれるわけでも高校サッカーで活躍できるわけでもないが、できる限り長くサッカーを続けてほしいと願っている。
「よく『子どもに教えられるの?』って聞かれますが、楽しくやるのは得意なんです。指導現場を見ていると勝利至上主義で勝てばいいっていう人もいますが、そういうのは嫌で。指導者に『蹴れ、走れ』って怒鳴られながら、サッカーしても全然楽しくないじゃないですか。余りにもやる気がなければ少しくらい活を入れますが、中学生までは戦術云々もいらないし、個性を出してやってくれたら。あとは『サッカーをやめんなよ!』って。
最初はみんな好きでサッカーを始めたのに、多くの人は途中でやめちゃう。確かに続けるのは難しいんですが、時間を作ってでもやりたい人は大人になっても続けているし、その差は何かなって考えます。いまは千葉県内だけでも中学のクラブチームはすごく多くて、200以上あります。昔に比べると親の熱量も凄くて、どこそこが強いとなれば、みんな親の勧めでそこに流れる。ウチは来る者を拒まずで、来た子たちにとにかく楽しんでもらうようにやっていますし、もっと自由にやればいいのにと思っちゃいますね」
「体が動く限りプレーできたら」
いまは元Jリーガーがサッカーを教えることは珍しくはなく、それで人が集まる時代ではない。そのなかで、生徒からお金を取ってクラブを運営している以上、よりチームの色を出すことが他との差別化にもつながると森崎は話したが、それ以上に自身の経験を踏まえサッカーを楽しんで欲しいと考えているのだ。
「僕は1回やめましたけど、やっぱりサッカーは楽しくて、40歳過ぎてもサッカーを続けていて『どこでやっていたの? 上手いね!』なんて言われたらうれしいでしょ。僕は普段、中学生と練習しているし、昔みたいには走れなくても技術的にはいまがピーク。だから、やめるタイミングなんてなくていいし、生涯現役っていうか体が動く限りプレーできたらと思っています」
そして、森崎はいま選手やサラリーマンのときよりも、ずっと人生を楽しんでいると笑った。
「高校選手権で優勝し、得点王になってよかったことも、そのことに苦しめられたこともありましたが、すべてをひっくるめていい思い出。ゴルフをすることも、お酒を飲むことも好きですが、やっぱりサッカーをしているときが一番楽しいですね」
<前編から続く>