猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス中嶋監督は大事な場面でなぜ「吉田凌」を起用した? 恐怖と闘いながら磨くスライダーと、“打たれた”日本シリーズの反省
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byHideki Sugiyama
posted2022/01/26 11:00
25年ぶりのリーグ優勝に貢献し、昨季の日本シリーズでは5試合に登板した吉田凌。新シーズンの活躍も期待したい
最速が150キロを超える本格派が多く揃うオリックス投手陣の中で、吉田凌は異色だ。吉田の一番の武器は、高校時代から一貫してスライダーである。独特な軌道で動く小さな変化から、三振を取りたい時などに使う大きな変化まで、多彩な変化を場面に応じて巧みに使い分ける。
それに加え、ストレートの球速を上回る140キロ台後半のスピードで、右打者の内角を突くシュートを会得したことで、スライダーがより生きるようになった。5年目の2020年は、35試合に登板して防御率2.17という結果を残した。
そして2021年は、優勝争いの中で存在感を発揮した。満塁や、ランナーを得点圏に背負うピンチの場面での登板が増えていった。
「結構やばい場面が多かったので、やりがいはありました。抑えたらチームを救える1アウトだったり2アウトだったりするので、そういうところで投げるのは本当にやりがいがあって、でも正直に言えばしんどかったですね」と苦笑する。
失点できない場面になるほど、吉田が信じられるのは、ストレートでもシュートでもなく、やはりスライダーだった。
「もうみんなわかってるでしょ、たぶん(苦笑)。僕もそう思いながら投げてますもん。『(サインに)首振ったらスライダーやろって、どうせみんなわかってるんやろうな』って、そう思いながら投げるんは、めっちゃ怖いですよ」
それでも簡単には捉えられないのが吉田のスライダーだ。ストライクからボールに逃げていくスライダーは、わかっていても振ってしまう。
日本シリーズでの悔しい経験
レギュラーシーズンは後半戦18試合に登板し、防御率2.12でリーグ優勝に貢献。CSファイナルステージでは第2、3戦の7回を任され、日本シリーズでは6戦中5試合で起用された。
だが2021年シーズンを振り返った吉田は、こう悔やんだ。
「レギュラーシーズンは多少自信になったんですけど、最後の最後、日本シリーズで、僕自身2敗したんで。そこを僕がちゃんと抑えておけば、チームの成績も変わっていましたから。レギュラーシーズンで良かったことが、日本シリーズに入って台無しというか、もっとやれたんじゃないかというふうに、終わってみて感じました」
日本シリーズでは第1、2戦で好投したが、第3戦の7回裏に、ヤクルトのサンタナに逆転の2点本塁打を浴び、敗戦投手となった。第6戦は延長12回表2死でマウンドに上がり、塩見泰隆の安打とパスボールでランナーが二塁に進んだ後、川端慎吾に決勝適時打を打たれた。