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オリックス中嶋監督は大事な場面でなぜ「吉田凌」を起用した? 恐怖と闘いながら磨くスライダーと、“打たれた”日本シリーズの反省 

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米虫紀子

米虫紀子Noriko Yonemushi

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photograph byHideki Sugiyama

posted2022/01/26 11:00

オリックス中嶋監督は大事な場面でなぜ「吉田凌」を起用した? 恐怖と闘いながら磨くスライダーと、“打たれた”日本シリーズの反省<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

25年ぶりのリーグ優勝に貢献し、昨季の日本シリーズでは5試合に登板した吉田凌。新シーズンの活躍も期待したい

 吉田が一番悔やむのは、第3戦のサンタナの本塁打だ。

「一発を打たれちゃいけない場面で打たれてしまった。自分の詰めの甘さが出た。もっと考え方を広くしていれば、と思いました。自分の選んだスライダーを投げて打たれたので、そこは後悔はないですけど、もっとやれたんじゃないかなというのが正直なところです」

 4-3で迎えたその回は、先頭だった2番・青木宣親が安打で出塁。3番・山田哲人には高めのストレートを捉えられたが、フェンスギリギリのところでグラブに収まった。

「あれは(スタンドに)行ったと、終わったと思いました。『なんでまっすぐ投げたんやろ!』と思いましたから。でも結果アウトだったので、『あ、俺ついてるわー』と思ったんですけど、甘くなかったですね」と吉田は振り返る。

 4番・村上宗隆は三振に取り2死となるが、5番・サンタナにはカウント2-0から、甘く入ったスライダーをライトスタンドに運ばれた。

「シュート行こうかなとも思ったんですけど、それが真ん中に入って打たれるのが一番あかんわと思った。『やっぱりもうスライダー行くしかないやろ!』と投げたら、高かった」

中嶋監督に言われていたこと

 昨年、吉田は中嶋聡監督から言われていたことがあった。8月31日の日本ハム戦で、ストライクを取りにいった初球のスライダーを、野村佑希にレフト前に運ばれ勝ち越しを許した時のことだ。

「お前のスライダーは、ボールでもバッターは絶対振ってくるんだから、『ボールでも振ってくれるわ』というぐらいの思いで投げたほうが、気持ち的に楽だぞ。スライダーのコントロールがいいから、ストライクを取れてしまうけど、少々ボールでもお前のスライダーなら振ってくれるから、それを意識して投げたらいいんじゃないか」

 吉田はそれを肝に銘じ、低めに投げることを意識するようになった。

「僕は単純にツーボール、スリーボールになるのが嫌なので、ストライクを取りにいっちゃうんですけど、ゾーンじゃなくても振ってくれるから、と考えるようになりました」

 だがサンタナの本塁打の場面では、やはりスリーボールにしたくないという思いがよぎった。

「次の中村(悠平)さんはチャンスでめちゃくちゃ打ってるイメージがあったから。サンタナはそれまで8の0で、打ってなかったので、ここで抑えるしかないやろ、と。最悪、まだ塁が2つ空いていましたから、そういうところを僕がもっと考えればよかったんですけど、その時はもう、『余計なランナー出したらあかんわ』と思ってたんで。場面が場面でしたから。あの日本シリーズは全部の試合が僅差で、ランナーを1人出すだけでも盛り上がりがすごかったから。空気変わるし、東京ドームやし」

 吉田の言葉から、あの日本シリーズの緊迫感がよみがえる。

【次ページ】 「こんな場面でまた行くの?」

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