猛牛のささやきBACK NUMBER
オリックス中嶋監督は大事な場面でなぜ「吉田凌」を起用した? 恐怖と闘いながら磨くスライダーと、“打たれた”日本シリーズの反省
posted2022/01/26 11:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
Hideki Sugiyama
熱戦の連続だった昨年の日本シリーズで、ヤクルトの守護神・マクガフと並び最多の5試合に登板したのが、オリックスの右腕、吉田凌(24歳)だった。
プロ6年目だった昨年は、開幕前に肩を痛め前半戦は二軍生活だったが、8月に一軍に昇格すると、シーズン終盤の優勝争いの中、満塁のピンチでマウンドに送り出されるなど、チームの命運を左右する場面で起用され続けた。
どんな場面でもひょうひょうとマウンドに上がったが、試合後は、「やばかった。やばかった。緊張したー」と言いながら、真っ先に球場を後にした。
「優勝争いをしているチームの、満塁の場面で……。こんなところで投げてるなんて、何年か前の自分に言っても、絶対信じないっすよ」
そう言って笑っていた。ましてや日本シリーズで5試合も投げるとは、以前は想像できなかっただろう。
中日・小笠原と全国制覇を達成
吉田は東海大相模高3年の夏、小笠原慎之介(中日)との二枚看板で全国制覇を達成。その年のドラフト5位でオリックスに入団した。
しかしプロの壁は厚かった。2年目の終盤に一軍初登板初先発の機会が巡ってきたが、2回2/3、6失点でチャンスをものにできず、3年目は一軍登板の機会はなかった。
吉田が入団した翌年には、山本由伸や山岡泰輔、山崎颯一郎といった黄金世代が大勢入団し、投手陣のチーム内競争は一気にレベルが上がった。毎年何人もの投手が戦力外となり、4年目まで一軍登板がわずか5試合だった吉田凌も、振るい落とされかけていた。
だがシュートの習得をきっかけに、吉田は這い上がる。