S級ライセンスを取得しておらず、ブラジル1部での指導経験もなかったため、日本サッカー協会（JFA）は彼の監督就任を認めなかった。そこで、若手時代の恩師ジョゼ・カルロス・セホーンを監督に据え、自らはコーチとして彼を補佐するという窮余の策を用いた。

　だが、前任の西野朗監督から戦術を大きく変えたことが裏目に出る。セホーン監督との二頭体制も混乱を招き、わずか5試合（Jリーグ3試合、アジアCL2試合）、2カ月足らずで監督ともども、解任された。

セホーン・呂比須体制は2カ月足らずで崩れた　©J.LEAGUE

ブラジル1部の監督を務めた初の日本人に

　その後、ブラジルの中小クラブで経験を積み、2014年、ブラジル1部クリシウマの監督に就任。ブラジル1部の監督を務めた初の日本人となった。約4カ月で解任されたが、その後も1部や2部の監督を歴任。2017年にはアルビレックス新潟を率いたが、戦力不足もあってJ2へ降格。責任を取って辞任した。

　それでも、この雑草は挫けない。

　2019年にアトレチコ・ゴイアニエンセを率いて州選手権を制覇し、この年、1部へ昇格する礎を築いた。今年は、ブラジル2部で低迷していたヴィトリアをシーズン途中から引き継いで奮闘したが、3部降格を阻止できなかった。

　波乱万丈の人生を歩み続ける呂比須に、ガンバやアルビレックス、ブラジルでの指導者キャリアについて聞いた。

ブラジルで経験を積んでから引き受けた方がよかった

――ガンバ大阪とアルビレックス新潟で思うような結果を残せなかった理由を、自分ではどう考えていますか？

「ガンバでは、就任前に監督ライセンスの問題で躓いた。自分とセホーン監督との関係性が明確でなく、チーム内で混乱を招いてしまった。今となっては、もっとブラジルで経験を積んでから監督を引き受けた方が良かったと思う。

　アルビレックスでは、シーズン途中で就任した難しさがあったし（注：10試合を経過した時点で成績不振のため前任者が休養した）、ブラジル人選手が揃って日本へ来たばかりで適応に手こずるなど、複数の問題があった」

――ブラジルで監督を務めるのと比べて、日本で監督をする上で特に困難な要素はありますか？

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