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今季のブンデスで日本人最多スコアラーに 急成長中の奥川雅也が「幻の街」に希望をもたらす
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/12/18 11:02
“幻の街”ビーレフェルトで成長を続ける奥川雅也。得点量産の要因と日本代表への想いとは?
奥川はチーム総得点の12得点のうち、5得点に絡んでいる。フランク・クラマー監督の信頼も厚い。その要因は、得点を決めているからではない。この日、いくつかのポジションで普段起用されていない選手がピッチに立っていたが、その理由について監督は、会見で次のように明かしている。
「我々は常にハイインテンシティでプレーしている。どこかでローテーションも必要だ。今日は特にハードプレーができる選手が必要だった」
ハードにプレーできる。それこそが奥川の持ち味のひとつだ。文句を言わず、感情的にならず、チームのためにプレーできる選手。そんな確信が監督の胸中にはあるのだろう。
「立ち上がりから良い試合をした。主導権を握って、インテンシティを保ち、チャンスへつながる攻撃のルートを作り出せていた。相手の素早い攻撃に気をつけ、情熱的に守備をすることができた。我々は生きているということを示すことができた」
チームパフォーマンスについてそのように語ったクラマー監督の声は、ガラガラだった。試合中に叫びすぎたせいだろう。奥川のゴールが生まれたときには絶叫していたはずだ。
日本代表への秘めたる思い
多くの得点に絡めている要因を、奥川自身はどのようにとらえているのだろう。
「去年と比べてポジションが前目で、攻撃的な役割が増えています。去年はボランチでの出場もあって、チームのために走ることが多かった。その点は今も変わらないですけど、より得点に絡む意識が強くなりましたし、僕自身ゴールという数字が欲しくなったんです。ここまで4得点ですけど、もっと決められるチャンスがありました。強いチームは、そういうところで確実に決めている。ブンデスリーガで決めるというのはすごい価値があると思うので、こだわってやっていけば、自分の成長につながると思います」
今季ブンデスリーガでプレーする日本人選手のなかで、最も点を取っている自負はある。着実に成長している自覚もある。秘めたる代表への思いを話す際には、その言葉にグッと力がこもったように感じた。
「代表ウィークが来るたびに試合を見ますが、毎回、悔しい気持ちで見ています。代表に呼ばれるためには結果を残すしかない。結果を残すことで見てもらえる。今は『チームの残留のために』で頭がいっぱいなので、チームを助けることができれば、それが結果だと言えると思います」
ビーレフェルトはボーフム戦で今季2勝目をあげ、16試合を終えて17位。残留圏にいる15位シュツットガルトとの勝点差は「4」。1部残留は現実的な目標と言える。
この先も、奥川のゴールが幻の街に確かな光をもたらすはずだ。