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今季のブンデスで日本人最多スコアラーに 急成長中の奥川雅也が「幻の街」に希望をもたらす 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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photograph byGetty Images

posted2021/12/18 11:02

今季のブンデスで日本人最多スコアラーに 急成長中の奥川雅也が「幻の街」に希望をもたらす<Number Web> photograph by Getty Images

“幻の街”ビーレフェルトで成長を続ける奥川雅也。得点量産の要因と日本代表への想いとは?

 12月14日、ボーフムをホームに迎えた日は霧雨だった。闇夜を照らすカクテル光線のなか、スタジアムが幻想的に浮かんでいた。

 15試合を消化した今シーズン、それまでわずか1勝のビーレフェルトにとっては早急に勝利が必要な状況で、ピッチの至る所で肉弾戦が繰り広げられた。両チームともテンポが速く、ゲームコントロールよりもゴールへの最短距離をがむしゃらに狙い続ける。そんなシーンが何度も続いた。

値千金のゴールを奪い勝利の立役者に

 慌ただしい試合展開のなか、奥川は冷静に周囲の状況をスキャンしながらポジションを微調整し、常にチャンスを探していた。奥川がボールを持つとゲームがスッと落ち着く。ボールがコントロールされて、ボールが味方に届く。自然とリズムが生まれていた。

 競り合いにも、相当強くなったと思える。相手との距離を測りながら、ボールと相手の間にしっかり体を入れて倒れない。奪われない。体つきも大きくなっているように見える。

「そこは慣れというか、ポジショニングを意識して、相手がどの位置で当たってくるのか、勉強しているところです。まだ難しい体勢だと当たり負けすることもありますが、自分の形に持っていけることが多くなってきたので、これからはもっと良くなるかなと」

 奥川自身は謙遜するが、ドイツでも見劣りしないフィジカルを備えつつある。

 試合は押し気味のビーレフェルトが決定機を生かせない展開で進んだ。チーム総得点がリーグ最少のビーレフェルトの得点王、キャプテンのファビアン・クロスはベンチスタート……。そうなると、もう1人の得点源に期待するしかない。

 それが奥川だ。51分、相手陣内の深い位置でボールを持ったパトリック・ビマーからのクロスに、ゴール前へうまく入り込んでいた奥川がドンピシャのヘディングで合わせた。値千金のゴール! 全員がベンチを飛び出しての大騒ぎとなった。

ハードにプレーできるのも持ち味のひとつ

 正直、ゴールチャンスが多いチームではない。しかし、そうしたなかで奥川がボールに絡むとチャンスになる頻度が高い。それは、偶然とは思えない。その秘密は、こだわりを持って取り組んでいる緻密なポジショニングにある。

「サイドからクロスが上がってきそうなときは、出し手の選手が顔を上げたタイミングで(マークについている)相手の視界から消えるような工夫はしています。ゴールの場面は、相手の視野からうまく隠れられたのがよかったと思います。まぁ、あの状況でしっかりとクロスを上げてくれる選手がいてこそのポジショニングですけど」

【次ページ】 日本代表への秘めたる思い

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#ビーレフェルト

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