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メルケル元首相とサッカードイツ代表の幸せな16年間…“お堅い”イメージを一変させたW杯の絶叫「あなたがとても恋しくなる」
posted2021/12/16 17:00
text by
円賀貴子Takako Maruga
photograph by
Getty Images
12月8日、15時15分。花束を持ったメルケルさんが、黒塗りの公用車の窓から控えめに手を振りながら、首相官邸を去った。16年間にわたって続いたドイツのアンゲラ・メルケル政権が、ついに幕を閉じた。
第1次メルケル内閣が発足したのは、サッカーW杯の自国開催を翌年に控えた2005年11月だった。同12月31日、首相として初めての新年挨拶で、こう話した。
「サッカー女子代表は既に(03年大会で)W杯王者になっていますから、男子が女子と同じことをできない理由は見当たりません」
実際、06年ドイツW杯でのメルケルさんのフィーバーぶりを見て驚いた。ドイツ中が歓喜に酔いしれ、お祭り騒ぎとなったこの大会中、メルケルさんはスタジアムの常連となり、大会組織委員会会長だったドイツサッカーのレジェンド、フランツ・ベッケンバウアーやドイツサッカー連盟会長、各国首相の隣でいつも嬉しそうに観戦していた。大会終盤にはドイツ代表チームを首相官邸に招いてもいる。屋上のテラスで食事とビールがふるまわれ、いたって気楽な良い雰囲気だったと伝えられている。
ビアホフ「私たちのマスコット」
それ以来、大きな大会に臨むドイツ代表には、メルケル首相がつきものとなった。ほとんど必ず合宿中に顔を出し、大会中は現地で観戦してロッカールームに祝福に行った。「もうチームの一部」と書くメディアもあったし、代表のチームマネジャーであるオリバー・ビアホフが「私たちのマスコット」とさえ言っていた。