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「俺が個人総合に出る」の橋本に「負けないぞ」の萱、口に出さずとも北園は…谷川航が語る“体操男子団体メンバーの素顔”
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byShinya Mano/JMPA
posted2021/12/10 11:02
東京五輪で銀メダルを獲得した体操男子団体チーム。左から萱和磨、谷川航、北園丈琉、橋本大輝
予選で失敗→決勝で見せた“最高の演技”
合宿では補欠メンバーから受けた刺激も大きかったという。
「本番を想定したシミュレーションでは、補欠の選手もすごく良い演技をしていました。いつでも代わってやるというプレッシャーを感じて、僕らも頑張らなくてはという気持ちになったし、良い刺激の中で切磋琢磨できました。団体は補欠の選手から押し上げられることによって強くなれます。今回はそれがしっかり出来ていたと思います」
団体メンバー4人全員が個人総合決勝に出られる可能性を持ちながら練習に取り組んだことも、プラスに作用した。
今回、日本は代表選考会の順位ではなく、団体総合予選の上位2人が個人総合に進出する方式を採った。つまり、団体総合予選で4人全員が6種目を演技し、各種目上位3人の合計点で団体予選の順位が決まり、さらには上位2枠分が個人総合の出場権を得られるという仕組みだ。
「団体では誰かがケガをした場合に備える必要があります。全員が6種目ともしっかり準備をする必要があったので、個人総合の決め方については僕も、最初から出場選手を絞らない方が良いと思っていました」
4人の力量にはっきりとした差がある場合は別だが、日本は4選手とも個人総合でメダル争いをできる力を持っていた。結果的には予選で突出した点数を出した橋本が個人総合を制し、種目別鉄棒と合わせて2冠に輝いたが、事前の総合力はかなり拮抗していたのだ。
谷川は個人種目での決勝進出がなく、決勝は団体のみだったが、得意の跳馬で最高の演技を見せ、気を吐いた。大技の「リ・セグァン2(前転跳び前方屈身2回宙返り1/2ひねり)」を着地までピタリと決め、決勝進出8チームの全選手の中でただ一人の15点台をたたき出した。団体総合予選では事前のアップで両足を攣った影響から失敗していたが、コンディショニングも含めて決勝では完璧に修正していた。