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筋肉の性質で見る競技別ピーク年齢。
体操、フィギュア、マラソン……。
posted2016/05/08 09:00
text by
増田晶文Masafumi Masuda
photograph by
AFLO
うかうかしていたら、とうとう56歳になってしもうた。筋トレ歴31年目、「若いモンに負けん!」と吼えてはいるものの、筋肉のハリが衰えてきたし、あちこちの関節だって泣き言を漏らす。ゆるゆるとポンコツ化が進行しているのを痛感し、オッサンならではの哀切を味わっておる次第であります。
筋力の衰え――これはアスリートにとって死活問題。ジムの片隅でタメ息をつくならともかく、勝負に翳がさすようになれば「引退」の2文字が現実味を増すというもの。
ありていにいって、トップアスリートには若々しいイメージがへばりついている。
そも、運動能力は筋力のみならず、運動神経や反射神経、視覚に聴覚などの感覚器官、さらには平衡性、柔軟性、敏捷性、代謝、ホルモン活動……などなどで構成されている。しかもこれらの多くは、10代半ばから急激に上昇し、20代前半にピークを迎えるという。さすれば、オリンピックが「若者の祭典」なんていわれるのを、オッサンは黙ってうなずくしかあるまい。
27歳の内村航平は、今まさに充実期。
というわけで、少々強引ながら今回は「筋力」にフォーカスしスポーツ適齢期との関係を考察することにしよう。
筋力は、マックスのポテンシャルたる「最大筋力」、それを効率よく瞬時に発揮する「筋瞬発力」、高いパフォーマンスを継続させる「筋持久力」の3つに大別される。筋力の3つの要素はそれぞれ緊密に関係しているから、並行して鍛錬し発達させるのが望ましい。逆に言えば、競技特性にかんがみて、意図的に特定の能力を鍛えることも可能だ。
たとえば男子体操では、最大筋力と筋瞬発力を高いレベルで発揮しなければいけない。
だが、男子体操選手にバーベルは無用で(!?)、鉄棒、吊り輪、あん馬、平行棒、跳馬、ゆかの6種目の練習がそのまま自重の筋トレに直結している。技を磨く過程であのマッチョな上半身をつくりあげていく。
(参照:「筋肉マニアがアスリートの体を見れば。内村航平の背中、五郎丸歩の脚部!」)
さらに、筋力の総合的なピークは、10代ではなく20代にずれこむことにも留意したい。遠藤幸雄に加藤澤男、具志堅幸司といったオリンピック歴代個人総合の王者しかり。彼らの競技生活の黄金期は20代半ばだった。
なるほど、前回ロンドン大会で覇者となったとき内村航平は23歳、リオ大会を27歳で迎える。20代最後のオリンピック、内村はチャンピオンにふさわしい充実期にあるとみていいだろう。