猛牛のささやきBACK NUMBER
「そんな振れんのかい!」オリックス中嶋監督が一番安堵した吉田正尚の“弾丸ライナー” T-岡田「チームの雰囲気が全然違う」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKYODO
posted2021/11/11 11:09
レギュラーシーズンのホーム最終戦では、茶目っ気たっぷりのスピーチでスタンドを沸かせた吉田正尚。日本シリーズ出場へ、頼れる主砲が帰ってきた
「なるべく試合に取っておこうと思って。練習ではイメージをつかむという程度にして、試合でしっかりいいスイングができればと思っています。試合では、今日だったら4打席でしたけど、そのうち振るのは……空振りをあんまりしないようにして、捉えようとしているので、1日5、6スイングかな。それぐらい少なくして、その中で最大限出せる準備をすることを、自分の中で考えながらやっています」
まさに一撃必殺。第1打席の弾丸ライナーはその結果だ。
「つまったり先っぽに当たると痛いので、芯に当たってよかったです。やっぱり最初のインパクトが大事なので、ファーストストライクは行こうと思っていました。チームを勢いづけたいなという思いがあったので」
第2打席では、2球目をスイングして捉え、センター前に復帰後初安打を放った。第3打席は一度も振ることなくストレートの四球で出塁。第4打席は、フルカウントからスイングしショートゴロ。この日の試合で吉田がスイングしたのは3回だけだ。空振りもファールもなく、すべてセンター方向に弾き返した。
「いるいないでチームの雰囲気が全然違う」
CS前日の取材で、骨折の回復具合を聞かれて、吉田は「内容はまだあんまり言えない」と言葉を濁した。
怪我が完治していない状態でプレーすることを美談にはしたくないのだが、日によって変化する自身の回復状態を、感覚を研ぎ澄ませて察知し、その中で最大限の力を発揮するための調整を行い、試合で結果を出す。プロの凄み、2年連続首位打者たる理由を見せつけられた。
初回に先制打を放ったT-岡田はこう語っていた。
「正尚は野球に関してすごく勉強熱心。何考えてるかわからないところは多々あるんですけど(笑)、一緒にプレーするとなったら、すごく心強い味方。やっぱり彼がいるいないで、チームの雰囲気が全然違う」