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シード圏外からの大逆転 箱根駅伝王者・駒澤大が「ベストメンバーではない&3位以内狙い」なのに優勝できた理由 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byYuki Suenaga

posted2021/11/08 17:04

シード圏外からの大逆転 箱根駅伝王者・駒澤大が「ベストメンバーではない&3位以内狙い」なのに優勝できた理由<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

一時はシード圏外にも落ちた駒大だったが、エース田澤の快走など後半に怒涛の追い上げを見せて全日本大学駅伝2連覇を達成した

 そして、大八木監督にとってこの劇的な2連覇は、過去4連覇、通算13回の優勝とは一味違うものになったようだ。

「今までは勝つと思ってやってきた。昨年も勝つと思って戦った。今年は怪我人が多くて、私自身に勝てるかどうか迷いがあった。周囲から優勝候補と言われましたけど、チャレンジャーの気持ちで臨みました。チャンスをもらった選手たちが一生懸命に走ってくれた。そうして勝てたのは駒澤にとって大きい」

 指揮官の言葉通り、この優勝は非常に大きな意味を持つ。

「ベストメンバーではないチームで勝てたのはすごく大きい」

 田澤を始め、出走した選手が口々にそう言った。

「主力が何人も抜けている状態で3位を狙うメンバーの中、自分は7区に入ったので、正直優勝できるとは思っていなかった。でも、ベストメンバーでなくても勝てたことで、すごくいい方向にいくと思うし、大きな自信になった。『おまえら、もっと自信をもっていいぞ』って一人一人に言いたいし、箱根で主力が戻ればもっと余裕を持ったレース、最初から最後までトップでいけるレースができると思います」

 田澤は胸を張って、そう言った。

 自信は、苦しいレースを制したことで得られる今回、最大の収穫だ。

ベストメンバーが揃えば“箱根駅伝の完全優勝”も見えてくる

 2年生の主力、篠原、山野を欠いても優勝できたことは、選手層の厚さを証明し、地力があることを改めて示したことになる。3、4年生の中間層の底上げは今後も必要であるし、2年生も鈴木ら故障者がおり、赤星、安原、花尾以外、今年の駅伝シーズンでは結果を出せていない。トラックでの強さをロードにどう結び付けていくかの課題は残る。

 ただ、5位に終わった出雲の後、距離走を入れて距離への不安を解消し、ロード力を高めていった。箱根に向けても疲労を取りながら大八木監督は、練習メニューを調整し、チームを整えていくだろう。そうして、今回のチームに鈴木ら主力が全員、戻ってくると、その陣容には畏怖すら覚える。

 出雲、全日本は競り合う駅伝になった。

 ベストメンバーが揃えば、箱根駅伝は競り合う駅伝に終止符を打つ「横綱駅伝」が可能となる。田澤の言う“往路復路の完全優勝”も見えてきそうだ。

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